123.小さな掌 ページ30
お湯をいただきサッパリした体を夜風が撫でる。ベランダで体の熱を覚ましていれば月が綺麗に闇夜に浮かんでいた。
「…ここに居たか」
耳に届いたバリトンボイスに振り向けばそこにはシェパードの姿のグルッペンが居て、『おいで』と言えば彼はトコトコやって来て私の隣に腰掛けた。
「昼間、奴らが来たと言っていたが」
『大丈夫。ロボロとひとらんが守ってくれたよ』
「…そうか」
グルッペンはそれ以上問い詰めようとはしない。私が何を聞いても『大丈夫』としか返さないのをわかっているからなのだろう。
言葉が互いに途切れ沈黙が降りる。小さな頭をそっと優しく撫でるれば気持ちよさそうに目を細める。そんな彼の姿に私は小さく笑った。
『…あと3日だね』
「…あぁ」
式の日まであと3日。あんなに長いと思っていたのに、時はあっという間に過ぎていた。
空に浮かぶ月を見上げる。
何も言わず、ただ一緒に眺めるだけの静かな空間。
「綺麗だな」
『うん』
「…月じゃない」
『へ？』
そっと骨ばった大きな手のひらが頬を包む。ゆっくり視線をそちらに向ければいつの間にか人の姿になったグルッペンがいた。
頬を撫で、するりと顎に指を添えられ顔を上げられる。
「お前だ」
ガーネットの瞳が細められる。今まで至近距離で見た事ない、綺麗な宝石のようなそれに魅入られ私はドキドキしながら彼を見上げた。
『…ありがとう？』
「…お前は相変わらずだな」
クク、といたずらっ子のような笑みを浮かべて笑う彼は次第に目を伏せ、腕を引いて私を抱きしめた。
まるで壊れ物を扱うかのように、優しく。
『…グルッペン？』
「すまない。少し緊張しててな」
背中に腕を回せばその背中が少しだけ強ばってることに気付く。グルッペンでも緊張するんだなぁ、なんて思いながらキュッとシャツを握った。
『大丈夫大丈夫。皆いるんだから、ね？』
「あぁ」
いつになく弱々しい彼。珍しいなと思いつつ、昔お母さんから教わった"おまじない"をしてあげよう。
『ねぇ、ちょっと屈んで』
「？あぁ」
不思議そうにする彼は言われた通りに背を丸める。
そんな彼の頭を抱くように、私は腕を伸ばして胸に引き寄せた。
「…何を」
『大丈夫大丈夫。不安がる事なんてないよ』
ぽんぽん、と小さな手で大きな彼の背中を叩く。
皆をまとめ、私を守る使命を一心に守ってくれている彼は頑張り過ぎだ。
その負担が少しでも減りますように。そう祈りつつ私は子供をあやす様に背中を叩き続けた。
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黒瀬(プロフ) - 小雨さん» ありがとうございます！この後の展開をどうするかで悩んでかなり遅くなってます。申し訳ありません！ (2020年7月26日 16時) (
レス) id: 3009402549 (このIDを非表示/違反報告)
小雨 - まさかniさんが人外やったとは…これからの展開凄く楽しみです！体調を崩さない程度に更新頑張ってください！ (2020年7月26日 10時) (レス) id: 459de324fd (このIDを非表示/違反報告)
黒瀬(プロフ) - 調味料さん» 久しぶりのコメントありがとうございます！出したいなぁ、と思ってたので無事出せて良かったです^^ (2020年6月27日 9時) (レス) id: 46340c89d0 (このIDを非表示/違反報告)
調味料 - 久しぶりにコメント失礼しまぁす。^r.a^な人外さんが出ててめっちゃ嬉しかったです、ありがとうございます(土下座)これからも更新頑張ってください〜 (2020年6月25日 21時) (レス) id: 06d5180623 (このIDを非表示/違反報告)
黒瀬(プロフ) - わたあめ@りんご桜さん» ありがとうございます！全員出演予定なのですが、人数が多いので中々難しいんですよね(--;)何とか上手いこと出して行けたら、と思います！ (2020年6月14日 10時) (レス) id: 46340c89d0 (このIDを非表示/違反報告)
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