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『トントン！や、やだ…っ！』
小さな体を曲げて痛みで震えるトントン。なんでこの子がこんな目に…何も悪くないのに。
『トント…っ嫌ぁ！』
「うるさい」
同僚だった男は眼中に無い私の頬を拳で殴りつけ胸倉を掴む。
「俺だけ見ろよ、なぁ…なぁ！！！」
『うるさい！離して！』
激昂してる同僚と興奮して泣き叫ぶ私。何度も何度も殴られ痛みが脳を駆け巡る。だけどそんな事気にもとめず、私はあの子の名前を呼び続けた、
「なんで、だよ…っ俺を…俺だけを見ろって…言ってるだろ！！！」
同僚だった男は業を煮やしたのか拳を頭に叩き込み、脳が揺れた私はとうとう地面に倒れる。
グラグラする頭も、視界も、気持ちが悪い。
「ふっ、やっと大人しくなったな」
抵抗が止まった私を見下ろす男がそのまま再び服に手を掛ける。
嫌だ、やめて。離して。
『たす、け…て……』
涙で視界がぼやけ出した、その時
「な、お前…なん……っ！がは…っ」
男の苦しむような声が聞こえやがて倒れる音が聞こえる。
視界の端で赤い何かが駆け抜けたらしく、次の瞬間には鉄臭い何かの臭いが充満し鼻を刺激した。
『な…に…？』
「…にゃー」
『…とん、とん…？』
いつもより弱いあの子の鳴き声。グラグラする頭で何とか壁伝いに起き上がり、おいでと腕を伸ばせばゆっくりトントンがやって来た。
『とん、とん』
「にゃー」
『痛いよね…苦しいよね…』
何が起きたか、彼がどうなったかはグラグラする視界ではわからない。だけど倒れた彼は起き上がる様子もない様なので、助けを求める為にフラフラとトントンを腕に抱いたまま裸足で外へと逃げ出した。
「…なぁん」
『あり、がと…ありがとう、ね…とん、とん…』
ギュッと腕に抱き、家の外へと出た瞬間聞き慣れた後輩の「Aさん？！」と狼狽する声が聞こえ顔を上げる。
「その怪我…もしかして」
『しょ、ぴ、く…』
たす、けて
そう呟いた瞬間体から力が抜け、私の意識は暗転した。
※※
持ってる力を振り絞り男の首を思い切り喰いちぎる。大動脈を切りつけられた男からは血がこぼれおち、やがて動かなくなった。
Aは殴られて見えへんはずやし大丈夫やろ。そう思い伸ばされた彼女の手に擦り寄り腕に抱かれた。
守れてよかった。
やがて聞こえてきたショッピ君の声に安堵しながら、俺は腕から抜け出しAの頬をペロリと舐めた。
ごめんなA。お別れや。
タイムリミットが来たらしい。
.
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名無していう名前の名無し - やばいでずぅ。目から涙がどまりばぜん…すぎでず…完璧にドンピシャ来て今も泣いてます←（嫌なコメントであれば消してください） (8月21日 16時) (
レス) @page26 id: cfc3f2d0fe (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - 暖かくて優しくて、そのまま微睡んでしまいそうな世界を見れて、とても良かったです。いつかオマケと言う名の小話を見れたら…なんて思いますが、それはまた別のお楽しみとしてとっておきます。黒瀬様の他作品も見てみようと思います(*ˊᵕˋ*) (6月23日 19時) (レス) @page26 id: 33402943a7 (このIDを非表示/違反報告)
黒瀬(プロフ) - 琥珀。さん» 長文でもありがとうございます。執筆者冥利に尽きるというものです。人の心に残る作品をかけてとても嬉しいです！こちらこそ、素敵な感想をありがとうございます。励みになります^^ (2022年2月23日 11時) (レス) id: 3a76da62a7 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀。 - 《長文ごめんなさい》これは運命では？と思いながら読んでいましたがやっぱりとても心に残る作品でした。とても良いお話ありがとうございました！ (2022年2月23日 2時) (レス) id: 0b0b8f154b (このIDを非表示/違反報告)
琥珀。 - もう一度見たいなーって思ったんですけどその頃はまじの初心者で題名も何も覚えてなく諦めていました。ですが今日黒瀬様の作品を見ていると黒猫と赤い人を見つけ『これはもしや！』と思ってみたら僕が探していたものでした (2022年2月23日 2時) (レス) id: 0b0b8f154b (このIDを非表示/違反報告)
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