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09. ページ10

「「………」」
『…』
「…にゃあ…」

帰宅して早々の事だった。

スーツ姿の男性が子猫を前に正座をし、固まる光景など誰が想像つくだろうか?

「にゃう、んにゃーあ(ショッピ君、どういう状況なん?)」
「ゾムさんがAさんと前世からの知り合いって事を俺がバラして確かめに来ました」
「ふしゃー!(何しとんねん!)」

ショッピ君とトントンが何か言い争いをし始めるけど私はそれを無視して晩御飯の用意を始める。

大の大人、しかも男性が三人。私はあまり食べないけど三人は別だろう。買ってきた焼き鳥や作り置きしていたカレー、簡単なサラダなどを並べれば皆は支度を手伝ってくれた。

『トントンは今日はお刺身ね』
「にゃ!」
「ふっ」
『…ゾムさんなんですか』
「いや、昔Aも刺身好きやったなって思って」

可愛かったなぁなんて笑うゾムさんにじわりと顔が熱くなる。落ち着け、ゾムさんが知ってる何かに対して言ってるだけだ。私にじゃない。

『…そ、そういえば前世って、どういう事なんですか』

話題を咄嗟に変えて手で仰ぎながらそう尋ねる。

するとエーミールさんがそっと口を開いた。

「…ここに居る私達、そして貴女も。皆前世で同じ城に住み、同じ志を持つ仲間でした」

エーミールさんは懐かしむ様に、こんな事もありましたねとまるで同窓会で学生時代を懐かしむかのように、優しく微笑みながら昔の私の話をしてくれた。

私は昔ボロボロの黒猫だったこと。そしてトントン…昔人間だった彼が私を拾い、愛してくれた事。

「トントンさんは…貴方をとても愛していました」

"____A"

『……』

私にはそういった記憶は全く無い。

全く無い、筈なんだ。

「…にゃあん…」

なのに、なんでなの。

『…あれ、なんで…っ』

貴方の顔を、思い出せないんだ。

"ホンマ可愛ええなぁお前"
"お利口さんやなぁ"
"大丈夫、俺がおるで"

夢で見た、子猫に優しく微笑む男の人。私はその笑顔がとても大好きだった。筈だった。

だけどその人の顔は夢から覚めるとぼんやりぼやけていて。

どうしても思い出せず胸がモヤモヤした。

そして何故か涙は止まらなかった。

『…ごめん、なさい…』
「…混乱させましたよね。すみません」
『いえ…』

子供のように泣きじゃくる私にゾムさんとショッピ君がそっと頭を撫でたり背中を撫でたりしてくれた。



ねぇ、どうして?

大切な人の筈なのに、貴方の顔が思い出せないの。

.

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名無していう名前の名無し - やばいでずぅ。目から涙がどまりばぜん…すぎでず…完璧にドンピシャ来て今も泣いてます←(嫌なコメントであれば消してください) (8月21日 16時) (レス) @page26 id: cfc3f2d0fe (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - 暖かくて優しくて、そのまま微睡んでしまいそうな世界を見れて、とても良かったです。いつかオマケと言う名の小話を見れたら…なんて思いますが、それはまた別のお楽しみとしてとっておきます。黒瀬様の他作品も見てみようと思います(*ˊᵕˋ*) (6月23日 19時) (レス) @page26 id: 33402943a7 (このIDを非表示/違反報告)
黒瀬(プロフ) - 琥珀。さん» 長文でもありがとうございます。執筆者冥利に尽きるというものです。人の心に残る作品をかけてとても嬉しいです!こちらこそ、素敵な感想をありがとうございます。励みになります^^ (2022年2月23日 11時) (レス) id: 3a76da62a7 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀。 - 《長文ごめんなさい》これは運命では?と思いながら読んでいましたがやっぱりとても心に残る作品でした。とても良いお話ありがとうございました! (2022年2月23日 2時) (レス) id: 0b0b8f154b (このIDを非表示/違反報告)
琥珀。 - もう一度見たいなーって思ったんですけどその頃はまじの初心者で題名も何も覚えてなく諦めていました。ですが今日黒瀬様の作品を見ていると黒猫と赤い人を見つけ『これはもしや!』と思ってみたら僕が探していたものでした (2022年2月23日 2時) (レス) id: 0b0b8f154b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒瀬 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2021年6月7日 7時

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