おまけ5. ページ19
※初めて泣いた日
その日、トントンさんはイライラしていた。というのもグルさんが仕事から逃げるし他の幹部は面倒事を増やし、その上仕事のお供のコーヒーを切らしていたからである。
癒し担当を任されている私は擦り寄ったり甘えたりしてなんとか疲労を取り除こうと試みたけど「すまん、邪魔せんでや」と退けられた。いつもは邪魔なんて言わないのに…
ここ一週間ドタバタしていたと思う。猫の私は気付けば爪が伸びきり、出し入れしなくとも物が引っかかる様になっていた上になんだか痒く感じていた。
『(爪とぎ用の木なんてないもんなぁ)』
いつもトントンさんが気が付いてお膝の上で切ってくれていた。だけど彼は多忙だ、我慢する他なかった。
だけど
『…ﾝﾆｬｰｱ(ダメだ、かゆい)』
木でも布でもなんでもいい。爪とぎ出来る場所を探していると、ふとテーブルの上に赤い布が置いてあってそれがいいと直感で思った。
『(これならスッキリするかも)』
そう思い手を掛けた、その瞬間。
「…ッ何しとんねんA！」
『ﾆｬｯ』
今まで聞いたことのない怒号と背中に受けた痛みに、私は机の上から落ちてしまった。猫だけどあまりの事過ぎて受身が取れず、足を打ち付け爪が根元から折れた。
「俺の大事なモンに何しとんねん…ホンマに…」
『ﾝﾆｬ､ﾅｫﾝ(え、嘘)』
彼が抱き上げた赤い布は、彼がいつも身につけていたマフラーだった。なんとかして謝らなきゃ、と思うも彼は舌打ちしたり部屋にあった本を乱雑に置いたりと聞き入れてくれなさそうだった。
「ったく…手間増やすんなら拾うんやなかったわ」
『…』
「はぁ…もうええから、どっか行けや」
『…ﾐｬｵﾝ』
「どっか出ていけ言うたやろ！」
『(ﾋﾞｸﾂ)』
ストレスが頂点に溜まったらしいトントンさんは机に拳を叩き付ける。
鈍い音と怒号に、前の世界の事を思い出した私は『またやってしまった』と後悔をした。
あぁそうだ、私は何をやっても"望まれない子"だった。
トントンさんに溺愛されて、必要とされた気になって、本当バカみたい。
『…ﾝﾐｬ…ｱ』
目から涙がぽろぽろ零れ落ちるのを感じ、私は開いていた廊下へ続く扉を抜けて何処へともなく走り出した。
「…ストレス溜まっとるからって八つ当たりしてもーた…はぁ…」
そうだったね
私、いらない子だったね
ごめんなさい。甘えて生きていて。
ごめんなさい。貴方と共に居たいと願って_____
(続きます)
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ジーナ(プロフ) - 久しぶりに小説で泣かせられました、、、読んでいると、うちの6代目のネコちゃんを思い出します。 (2021年6月2日 13時) (
レス) id: 5d4a55a6f3 (このIDを非表示/違反報告)
ルクテ(プロフ) - 癒されると思ってたから、突然の展開に感動して大泣きしました(T-T) 黒瀬さんの作品大好きです！続編希望です!! あと、よければ合作とk((ﾅﾝﾃﾞﾓｱﾘﾏｾﾝ (2021年6月2日 0時) (レス) id: 05a910269c (このIDを非表示/違反報告)
桜華(プロフ) - あぁぁ、、、悲しい、、大泣きしそうになっちゃいました、、。いやでも、勇敢な夢主さんですよ、、大切な人を守るために命をかける。きっと、来世は幸せ者でしょうね、、、！！ (2021年6月1日 23時) (レス) id: 1bda5ccdb4 (このIDを非表示/違反報告)
ウルフグリーン(プロフ) - 泣きたかったけど、勉強中にこっそり見てたので、泣ける暇がありませんでした。感動しました。続編希望です！ (2021年6月1日 19時) (レス) id: cfbc218aad (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - うっ…お恥ずかしながら大泣きしました…！もういい話過ぎてっ…！すごい大好きです！！！続編…めっっっちゃ読みたいです！お願いします！ (2021年6月1日 18時) (レス) id: 71bc8f54f4 (このIDを非表示/違反報告)
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