12. ページ12
gr side
一人と一匹が部屋を出てから三十分後。
部屋に戻ってきたトントンは俯きながら近くにいたひとらんに、マフラーで包んだAを手渡した。
「ひとらんすまん、Aを綺麗にしてもらってええか」
「…わかった」
ひとらんも察したのだろう、トントンの赤いマフラーに包まれたAを受け取り顔を覗き込んだ。
「…可愛い寝顔だね。相変わらず」
「…」
「任せて。一番可愛くしてあげる」
ひとらんが眠りについたAの頬を優しく撫でる。
今にも眠りから覚め、遊びませんかと可愛らしく鳴きそうだ。
「トントン」
「すまん、夜まで一人にさせてくれへんか」
「…あぁ」
背を向けたトントンの顔はこちらからは見えない。だけど言ってやらなければいけないと思った。
「…あいつは、Aは、お前と出会えて幸せだったと思うぞ」
俺の言葉に一瞬足が止まり、「…当たり前やろ」と呟いて部屋から去っていったトントン。
「…グルちゃんも素直やないなぁ」
「喧しいわ」
茶化す大先生の頭をシバき、眠っているAを抱くひとらんの前に歩み寄る。
「ひとらん」
「…うん」
部屋の真ん中にある机に寝かせてやり、そして頭に着けてた軍帽を外し胸の前に当てる。
「…皆、勇敢な我らの仲間に…敬意を」
泣くのを堪えてる者、堪えきれずに泣いてる者、彼女は確かに仲間だったと想っていた者。
皆が彼女が安らかに眠れるように、と祈りを捧げた。
「…おやすみ、A」
安らかに眠ってくれ。
※※
我々国には小さな墓がある。
兵士のかって？そんなわけがない。
あの場所には幹部から愛され、勇敢に戦い戦死した小さな仲間が眠ってるんだって。
「…」
彼女を溺愛していた赤色の幹部が中庭の花畑家に立ち尽くす。生きていれば今頃、あの子と一緒に見ていただろうと思いに耽っていたのだ。
「…忘れへんよ。A」
今は傷が治った薬指をそっと撫でる。
「やから俺がそっち行くまで安心して眠ってな」
静かにそう呟いたその時
…にゃー
「…？気の所為、か」
小さな仲間が眠る城の中、
何処かから猫の鳴き声が聞こえた気がした。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 497人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ジーナ(プロフ) - 久しぶりに小説で泣かせられました、、、読んでいると、うちの6代目のネコちゃんを思い出します。 (2021年6月2日 13時) (
レス) id: 5d4a55a6f3 (このIDを非表示/違反報告)
ルクテ(プロフ) - 癒されると思ってたから、突然の展開に感動して大泣きしました(T-T) 黒瀬さんの作品大好きです！続編希望です!! あと、よければ合作とk((ﾅﾝﾃﾞﾓｱﾘﾏｾﾝ (2021年6月2日 0時) (レス) id: 05a910269c (このIDを非表示/違反報告)
桜華(プロフ) - あぁぁ、、、悲しい、、大泣きしそうになっちゃいました、、。いやでも、勇敢な夢主さんですよ、、大切な人を守るために命をかける。きっと、来世は幸せ者でしょうね、、、！！ (2021年6月1日 23時) (レス) id: 1bda5ccdb4 (このIDを非表示/違反報告)
ウルフグリーン(プロフ) - 泣きたかったけど、勉強中にこっそり見てたので、泣ける暇がありませんでした。感動しました。続編希望です！ (2021年6月1日 19時) (レス) id: cfbc218aad (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - うっ…お恥ずかしながら大泣きしました…！もういい話過ぎてっ…！すごい大好きです！！！続編…めっっっちゃ読みたいです！お願いします！ (2021年6月1日 18時) (レス) id: 71bc8f54f4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
