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目の見えない中、ゆらゆらと心地よい体温と匂いに包まれる。
『…ﾆｬ…』
「匂いするか？ここ、中庭やで」
中庭は、確かひとらんさんの育てたお鼻が咲きほこってる場所だ。お花のいい匂いがした。
「ひとらんがな、蜂蜜使ってAでも食えるクッキー焼いてくれる言うてたで」
『…』
「オスマンもな？触り心地ええクッション持ってくる言うてたで。昼寝には最高やな」
『…ﾆｰ』
「ゾムとかコネシマも来る言うてたし喧しくなりそうやな。煩いの嫌やったら叱ったるから言うてな」
『…』
腕の中の体はぐったりして動かず、息をするのも辛かった。
だけど苦しくて鳴いたりはしない。
だって既にトントンさん、泣きそうだから。
「…やから、Aも一緒に…行こう、なぁ…っ」
動かない私に我慢出来なくなったのだろうか、塩っぱい雫が私の頬にこぼれおちた。
泣かないで
『…ﾆｬ…』
「A…ッなんで…こんな…っ」
ぽたぽたと零れ落ちる雫が頬や体へと落ちていく。
あまり動かない体に鞭打って、そっと頬の雫をペロリと舐める。
泣かないで。笑って。
貴方のそんな顔、見たくないの。…見えないけれど。
「…なぁ、A…」
『…』
ゴソゴソと布擦れの音がした後ふわりと柔らかく、トントンさんの匂いのする何かに包まれる。
「お前にな、いつかお揃いのマフラーあげたい思っててん」
『…』
「やけど間に合わへんから、やから、これで我慢してな」
トントンさんのマフラー。それは、とても大切なものだと聞いた事があった。
私がそれを知らず爪とぎしようとして、本気で怒られたこともありましたね。
「ん、似合っとる…可愛ええなぁ…」
ずび、と鼻をすする音が聞こえた。
お揃いですね。とっても嬉しいです。
『…ﾆｬｰ…』
「A…？」
胸に顔を預け、そして心の中でごめんなさいと謝ってから頬を撫でる指をガリッと噛んだ。
「い゛っ？！」
『…ﾆｬｳ』
血が出たらしいそこをぺろぺろ舐めて跡を残す。
どうか忘れないで、私の事を。
「…ッ」
『…ﾆｬｰ…』
トントンさんは気付いたらしい。
もう、限界が来たことを。
『…』
「A…っA…！」
最後までそばにいてくれてありがとう。
私は貴方に愛されて、ずっと幸せでした。
「A…！」
『…ﾆｬｱ(おやすみなさい)』
尻尾が一度だけ揺れたかと思うと
腕の中の猫は動かなくなり目を閉じた。
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ジーナ(プロフ) - 久しぶりに小説で泣かせられました、、、読んでいると、うちの6代目のネコちゃんを思い出します。 (2021年6月2日 13時) (
レス) id: 5d4a55a6f3 (このIDを非表示/違反報告)
ルクテ(プロフ) - 癒されると思ってたから、突然の展開に感動して大泣きしました(T-T) 黒瀬さんの作品大好きです！続編希望です!! あと、よければ合作とk((ﾅﾝﾃﾞﾓｱﾘﾏｾﾝ (2021年6月2日 0時) (レス) id: 05a910269c (このIDを非表示/違反報告)
桜華(プロフ) - あぁぁ、、、悲しい、、大泣きしそうになっちゃいました、、。いやでも、勇敢な夢主さんですよ、、大切な人を守るために命をかける。きっと、来世は幸せ者でしょうね、、、！！ (2021年6月1日 23時) (レス) id: 1bda5ccdb4 (このIDを非表示/違反報告)
ウルフグリーン(プロフ) - 泣きたかったけど、勉強中にこっそり見てたので、泣ける暇がありませんでした。感動しました。続編希望です！ (2021年6月1日 19時) (レス) id: cfbc218aad (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - うっ…お恥ずかしながら大泣きしました…！もういい話過ぎてっ…！すごい大好きです！！！続編…めっっっちゃ読みたいです！お願いします！ (2021年6月1日 18時) (レス) id: 71bc8f54f4 (このIDを非表示/違反報告)
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