07.あげないよ os ページ16
※十二歳になる前のある日のお話。
※そんなに怖くないけどホラー注意
____それは、夏のある日の事だった。
『マンちゃん待って』
「ゆっくりやから大丈夫やで」
杖での歩行が遅い私の練習の手伝いを申し出たマンちゃん。彼は空いてる右手をとってエスコートしてくれていた。
ゆっくり、だけど確実に歩けてる。
一時間程城の中を歩いた私はクタクタで、ちょっと休憩と言って中庭のベンチに腰を下ろした。
空は青からオレンジへと変わろうとしている。そろそろ夕方だ。
『疲れた…やっぱり足に筋肉つけなきゃダメだね』
「ロボロに相談とかは？」
『簡単なのがいいな…』
ロボロ筋トレにはストイックみたいだから、と言えばマンちゃんもせやなぁと笑う。
「せや！グルッぺンとトントンからお菓子とお茶、ええの貰ったんよ！準備するからちょお待っててくれへん？」
『いいの？』
「勿論！すぐ用意するから待っててな〜」
パタパタ駆けていったマンちゃんを見送りベンチに腰を深くかける。マンちゃんのお茶、美味しいから楽しみだな。
そう思っていると、ふと後ろの方に何かの気配を感じた。
「こんにちは」
『…？』
聞いたことの無い声に耳が揺れる。
なんだろう、まるでノイズの交じったような声だ。
何となく、聞こえてないふりをして無視をした。
「…こんにちハ？」
『…！』
やっぱりそうだ。
この声はおかしい。
…生きてる人の声じゃない。
「聞こエない？オカしイナ」
ベチャッと何か生肉が地面にぶつかる音がした。
怖くて後ろを振り向けない。
だけど、確実に何かが後ろにいるのはわかった。
「こンにちハ？どうしテ、無視ずるノ？」
『…ッ』
目をつぶる事も出来ず後ろからの気配と恐怖に必死に耐える。助けを呼ぼうにも声は出ないし、周りには人の気配が一切ない。
カタカタ震えながら、ただ誰か来てくれるのをひたすら待った。
怖い
誰か
助けて…っ
「お待たせ、子うさぎちゃん」
『…っマンちゃ…』
戻ってきたマンちゃんは見慣れない狐のお面を被っていて。唇に人差し指を当てて「しぃー」と口を塞いだ。
「…君の居場所はここやないやろ？はよアッチ帰りや」
マンちゃんが私でなく後ろの何かにそう語り掛ける。
「ほれ、この子にちょっかいかけんとさっさと行きや」
「…」
「この子はあげへんよ」
「…」
後ろの気配が次第に遠ざかっていく。マンちゃんはお面を外すと「よく頑張ったなぁ」と安心から泣き出した私を優しく抱きしめてくれた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 890人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
すみれいん(プロフ) - 黒瀬さん» 猫ちゃん！大丈夫です！すみません、中々御相手が決めれなかったので助かります！ (2022年1月19日 19時) (
レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
黒瀬(プロフ) - すみれいんさん» リクエストありがとうございます！御相手の表記が無いので、問題なければ猫ちゃんになっちゃって、御相手sypとなりますがよろしいでしょうか？ (2022年1月19日 12時) (レス) id: 3a76da62a7 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - リクエストと言うかもし見れるなら見てみたいなぁと言うのが、メンバーの属している獣になっているのを少し見てみたいなぁと思います！兎ちゃんのお話好きなので本編も何回も見てます! (2022年1月17日 9時) (レス) @page49 id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
桜の穂 - あぁ”…好きです!更新頑張ってください! (2022年1月7日 15時) (レス) @page42 id: f612835adc (このIDを非表示/違反報告)
tubin - こんにちは！ (2022年1月5日 8時) (レス) id: f053091504 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
