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「ステージ上でのお手伝いは大丈夫だから、通し練習の光景でも見ててよ」
おじじさんが気を使ってくださったのか、私はステージから降ろされ会場の真ん中辺りの席で皆さんを眺めていた。
「Sellyそれはアカンやろ!」
「Rasには負けたくねぇw」
「しすこさん頑張れー!」
「っしゃー!」
「じゃすぱーよわーっwww」
「うるせぇー!」
壇上の彼らはストリーマーだと言うのにアイドルの様にとても輝いて見えて。ゲームの腕だけが魅力じゃない、彼らのステージを駆け回る姿に私は目を奪われていた。
後輩である自分ではまだ到達出来ない領域だ。
『…すごい、なぁ』
あんな世界に、自分もいつか行けるのだろうか。
APEXがちょっとだけ上手くて、Mondoの彼女という立場だけの自分が。
「_すごくないよ」
『…え』
独り言で呟いたはずの言葉に返された、冷静な言葉。
横を向けば、いつの間にかポケットに手を突っ込んだMondoが立っていた。
『Mondo?練習は?』
「飽きた」
『えぇ…』
よく見るとおじじさんが周囲を見渡している。それに気付いた壇上のしすこさんがこちらを指さし、おじじさんがこちらを見てため息をついていた。
『…行ってきたら?』
「どうでもいい」
『おい出演者』
本気で怒られるよ?そろそろ。
「…なんか、落ち込んでたから」
『うん?』
「行かなきゃなーって」
『…拗ねてたのはもういいの?』
貴方のそれも気落ちしてた原因なんですけど。なんて言う事は出来ず、代わりに彼の横顔を見つめる。
「もういいです」
『…そう』
隣に座ってきたMondoはゆっくりと、そっと、空いてた私の手を取り指を絡める様に緩く握った。
落ち着く、温かな心地良さに胸がギュッとなる。
「Aが辛い時、そばにいるって決めてるから」
『…そうなの?』
「ん。」
『…そっかぁ』
緩く握られた手を見て小さく微笑む。まぁ、彼の中で完結したならそれでいいか。
『本番大丈夫そう?』
「何とかなるんじゃない?」
『他人事すぎでしょ』
ふふ、と笑えば彼の口元も少し緩んで。手を握り返せば隣り合ってた肩同士の距離が0になった。
「次はAも出よ」
『次があればね』
「おじじ脅すしかないねぇ」
『やめてあげて』
小さく笑う私達。壇上なんてもう見てなくて。
「Mondoガチ羨ましい」
「リア充め…」
じゃすぱーさん、しすこさんを始め数名に羨望の眼差しを向けられていた事に気付くのは、それから数分後の事だった。
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うみ(プロフ) - 良さげだったのに帰国させた先方を恨みます。こっからも楽しみに待機してます! (5月2日 23時) (レス) @page50 id: 5788af662a (このIDを非表示/違反報告)
名無し37131号(プロフ) - ただの妄想だけどモミアゲヨシャカアゲヨとか歌ってネタに走って欲しいw (4月3日 0時) (レス) @page39 id: 44a1f27f6a (このIDを非表示/違反報告)
なつ(??)(プロフ) - ガチでおもろかった (3月16日 20時) (レス) @page30 id: 8a15510d16 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒瀬 | 作成日時:2024年1月21日 0時