溜息。[鈴風] ページ5
…
ため息を零す。
騎士団は動いているのだろうか。
ヒルチャールの行動が活発化して、アビス教団の手を借りてかなり知能的な集団活動をするようになった、とはよく耳にした。
正直、ヒルチャールを狩ることは好きではない。
僕らは僕らの生活を守るために彼らを殺すのだが、彼らには彼らの生活があるだろう?
それを意図も容易く壊してしまってはいけない気がしてならなかった。
『仕方ないな、手っ取り早く。痛くない程度に、迅速に任務を終わらせよう。』
でもまあ、その依頼が出てしまったのなら、全うする他ない。
ヒルチャールが殺される時、痛いと感じるのかは分からない。
けれど、彼らにもきっとそういう感情はあるはずだ。
否、無いのかもしれないが、そう思うのは大切だと思う。
任務地へ歩みを進めながら、そんなことを考える。
アビス集団は僕は嫌いである。
弱みに漬け込み、他者を感化し、操る。
誰しも汚い部分というものは持つのだろう。けれど、そこに漬け込むとは本当のクズだ。良くない。
「……」
剣を取り出す。パァっとエフェクトが出来て、剣が成形された。
それを握って、到着した任務地に居た何匹かのヒルチャールとそれを統率するアビスの輪の中に突っ込んでいく。
剣を振るう。
嗚呼、昔、なんの為に剣を振るうのか、と問われたことがあった。
僕自身、その辺は曖昧でまだ決まってはいなかった。
何の為に振るうものか、確定しなくては強くはなれないと言われもしたなぁ。
何のために振るうのか。まだ、決まってはいないけれど。
目の前の敵を、否、任務対象を、ただ切り裂くのみ。
エフェクトが散り、消える、彼らの姿をただただ無心で見つめた。
任務完了を確認した後、剣を振るうのを辞める。すると、黄色いエフェクトと共にそれは消え失せた。
「ざけんじゃねぇよ…。」
ヒルチャールだって生きてるのに。そう何度も思えど、人々はヒルチャールを敵対視する。
何方が先に敵対視したかは卵が先か鶏が先か状態なので分かりやしないが。
確かに、ただの人にとっては脅威かもしれない。
何時かは分かり合える日が来るだろう。
それは、どちらかが飼い慣らされた結果ではなく、双方がお互いににこにこと笑っていられるような、そんな和解だとうれしいのだが。
そう考えながら、その場を後にした。
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作者名:月影 陽 | 作成日時:2021年2月23日 23時