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連れてこられたのは、先ほどまで彼方が立っていたステージの上だった。
セットはまだ置かれたままで、ライブの空気がまだ余韻を残している。
ライトに照らされてセットが光る。
ステージの中心に来ると、彼方は立ち止まって私の方を向いた。
そして一歩、二歩と後ろに下がる。
「梓、今日は来てくれてありがとう」
『…うん』
彼方は優しく微笑む。
「聞いてほしいことがあるんだ」
『……うん、ちゃんと聞くよ』
彼方は深く呼吸をして、喋り出した。
「ずっとずっと、謝りたかった。俺が弱かったせいで、梓を傷つけたこと。
あの時、梓は俺が言った我儘を受け止めて、別れてくれたよね。
……それなのに、カウントダウンライブで俺が倒れた時、梓は黙って看病してくれて。嫌われてると思ってたから、嬉しかった。冷たい態度をとっちゃったけど、抱きしめたいくらい嬉しかったよ。」
『…うん、』
「梓とよりを戻せた時、幸せだった。二度と悲しませたり苦しませたりしないって誓ったのに、俺が不甲斐ないばっかりに、また梓が傷ついたよね。
東京と名古屋で、遠くて、側にいれなくて、ごめん。」
『ぅ、ん』
彼方はゆっくりとしゃがんで、片膝をついた。
「梓。」
『な、に』
「不甲斐なくて、ごめん。たくさん傷つけてごめん。だけど、」
彼方の声が震えた。
「だけど、梓を愛してるのは本当だから。誰よりも大切に、誰よりも幸せにするから…だから、こんな俺だけど……」
跪いた彼方の手の上、開かれた留紺色のリングケースの中には＿＿＿輝く指輪が飾られていた。
「梓、俺と結婚してください」
『…っ、』
我慢していた涙がこぼれた。視界が歪んでいく。
力が抜けて、その場にかがんだ。
拭っても拭っても止まらない涙。彼方が視線を合わせるように近づいてきて、私を抱きしめた。
顔を覆う自分の手の指の隙間からも涙が溢れて止まらなかった。
『…っかな、た』
「ん。」
『ほん、とに…わたし、っでいいの…？』
「梓がいいんだよ」
彼方の着ている服の胸元に顔を
「ね、梓。俺と結婚してくれる？」
『はい以外の答えなんて、ないよ…』
「うん、ありがとう」
彼方の指が溢れる私の涙を拭う。
そのまま頬を包み込まれ、ゆっくりと口づけをした。
誓うように、そっと。
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