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〜梓side〜
彼方のことを控え室で待っていると、いつの間にか15分程たっていた。ちかさんが話しかけてくれるけれど、彼方のことが気がかりで耳から耳はすり抜けていってしまう。
「ねえ、梓さん」
『…っあ、はい』
「あはは、そんなにそらっさんのこと気になるんですか?」
『…はい、』
ちかさんは微笑ましそうに、優しい目で私を見つめていた。
端正な顔立ちだなあ、とぼんやりと考えていると
「梓さんは、そらっさんのこと…ほんとに大好きなんですね」
『え?』
「梓さんって俺や他の人と話す時よりも、そらっさんと話す時の方が表情豊かで、嬉しそうなんですよ。まあ、それもそらっさんも同じですけどね(笑)」
ちかさんは静かに話し出した。
「そらっさん、梓さんと別れた直後に何度も俺に相談してきたんです。それこそほんとに傷ついてて、見てて苦しかったです。梓さんの代わりはできないけど、支えられたらいいな…って思ってインフォをやらせてもらって。
梓さんと別れた後も、復縁した後も、ずっとそらっさんは梓さんのことばっか考えてました。口を開けば、梓が、梓がって。」
そのことを思い出したのかクスクスとちかさんは笑う。
「今日のライブも梓さんが大好きだって全身で言ってるようなものでした。あの人、終盤はほとんど梓さんの方見てましたし。」
『そうなんですか…?』
「はい。嬉しかったんだと思います。誕生日にライブができて…しかも自分の姿を
さっきのライブを思い出して、恥ずかしくなった。
やけに彼方と目が合う気がして、勘違いだと思っていたけど本当にこっちを見ていただなんて。
「梓さん」
『?』
「これからそらっさんと付き合いを続けていくことで、きっと大変なことがたくさんあると思います。」
『…』
ちかさんの目が私の目をとらえて離さない。
「でも、それに負けないでください。俺たちが味方です、ちゃんと守ります。だから…」
そらっさんの、…彼方の話を聞いてあげてください。
ちかさんがそう言った直後、控え室のドアが開いて彼方が入ってきた。
ちかさんに目配せをした後、私に手を差し伸べる。
「梓、一緒に来て」
『…はい』
彼方の手に触れた。
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