#92 ページ18
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〜そらるside〜
何か言いたそうな顔をしたまま、センラくんは黙ってしまう。
でも、すぐに笑顔になって
「待ってあげててください。そのほうが、梓ちゃん喜びますよ」
と言ってくれる。
LINE入れたらどうですか、と言われて、俺はそれに従ってトーク画面を開いた。
梓は仕事中だろうから、簡潔に書いておいた方がいいだろうな。
＞＞今名古屋にいるんだ。今日、梓の家に泊まってもいい？
すぐに送信されたのを確認して、スマホの画面からセンラくんへ視線を移す。
そこにはいつもの笑顔を浮かべたセンラくんがいるだけだった。
その笑顔の裏になにを隠してるのか、俺には聞けなかった。
「この後どうしはるんですか？」
「適当に時間を潰しておくよ。」
「…よければ、俺とご飯食べに行きませんか？」
そう言われて俺はあっけに取られてしまった。
まさかセンラくんにご飯に誘われると思っていなかったから。
…仕事中だと思っていたけど、今見てみれば服装がラフすぎていた。
「じゃあ、ご一緒しようかな」
「そらるさんとご飯、嬉しいです」
〜センラside〜
「へえ、じゃあライブの発表は25日に。」
「うん。あ、だから今日俺が名古屋来たっていうのは内緒ね」
「わかりました〜」
スープカレーを一口、また一口と口に運びながらそらるさんは嬉しそうに話した。
ワンマンツアーをするのがよほど楽しみらしい。
すると、机に置かれていたそらるさんのスマホが震えた。暗かった画面がパッと明るくなって、通知を表示する。
「あ。梓からだ。」
「なんて来たんですか？」
そらるさんは、えっとねー、と呟いた後すぐに頬を緩ませた。
泊まっていいよという承諾の連絡だったのだろう。
「梓、いいってさ。会社に家の鍵と、車の鍵取りに来てだって。」
「車の鍵ってことは…」
「仕事終わり、迎えに来てって事なんだろうね(笑)」
名古屋と東京という距離で、上手くいってるのか心配だったがやはり杞憂だったようだ。
「そらるさんは、結婚しないんですか？…梓ちゃんと。」
聞きたくなった。たったそれだけ。
梓ちゃん自身もどこかで "それ" を待ってそうで、このまま、またしばらく"恋人"を続けるのかと心配なのもあった。
返事が返ってこない。
ちらりとそらるさんの方を見ようとすると…
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「結婚するよ、来年」
相手はそう、静かに言い放った。
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