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#90 ページ16

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笑顔を浮かべる楠さんを凝視してしまう。


『どうしてここに?』

「ちょっと友達と出かけてたらさ〜、ライブ会場があるって聞いて。来てみたら梓ちゃんがいた、みたいな?」


友達と指差した女性は楠さんの腕に自分の腕を絡めていて、友人には見えない。

"女誑し"。センラさんの言っていたその言葉が頭に浮かぶ。


「てかさ、ここで出会うって運命じゃない?」

『いや…あの…』


女の人が絡めていた腕を解いて、ズイ と顔を近づけてくる。
後ろで私を睨みつける女の人が見えて、背筋が少し凍った。
楠さんの私を呼ぶ声が遠くなったかと思えば、肩が抱き寄せられた。


「どうしてここにいはるんですか、楠サン」

「うっわ、船山享…」

「聞こえてますけど?」


バチバチと火花が飛ぶように2人は見つめあう。


「えーっと、なに?船山サンは、梓ちゃんと付き合ってんの?」

「……付き合ってるわけないやろ」

「じゃあどうしてそんな梓ちゃんのセコムやってるわけ?」

「……」


一層眉間にしわを寄せて、船山さんは黙り込んでしまう。

後から船山さんを追いかけてきたのか、うらたさんと坂田さんが来た。
それを見て楠さんは「なんなんだよ」と呟く。


「少なくとも、梓ちゃんの彼氏でもないやつに俺のこと止める権利ないよね?」


私の肩を抱く船山さんの手に力がこもる。
ニヤリと笑う楠さんに対し、船山さんは無表情だ。でも、どこか楠さんを見つめる目には怒りが滲んでいて。


「……もう、ええわ。」


静かにそう言ったあと、うらたさんと坂田さんを呼んで私の手を引いた。







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「面白くないなぁ」







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送迎用のワゴン車の中で、船山さんは一言も話さなかった。
坂田さんが話しかけても、「あぁ」「うん」と返事らしい返事が返ってこない。

うらたさんに放っておこうと言われ、渋々口を閉じる坂田さん。
この後ご飯行く?とうらたさんが聞いてくる。
乗り気になれなかった私は断りを入れて、3人に別れを告げて近くの駅で車を降りた。




梓≪@Azusa_0710:最近いいことないなあ≫22:54




通知で震えるスマホをポケットに入れて、そのまま駅を通り過ぎた









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作者名:MiKU | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2018年4月6日 22時

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