#76 ーten years agoー ページ2
2007年 春
梓 , 翔太 , 真冬 高校1年生
〜翔太side〜
コンコンと自室のドアがノックされる。
あぁ もうそんな時間か、とドアの方を見れば、顔を出したのは梓ちゃんだった。
『おはよ、翔太。入学式行くよ〜』
整えられた黒髪はハーフアップにされていて、梓ちゃんが微笑むたびに揺れる。
「おっけー。あれ、真冬は?」
『寝坊してたから起こしてきた。多分外で待ってる』
「真冬らし〜(笑)」
ゲームの画面を閉じてカバンを持つ。
中学の時と変わらない。
示し合わせたわけでもなく同じ学校に行って、一緒に登校して。時間が合えば一緒に帰ったりする。
クラスは離れたけど、幼馴染だからか昔から仲はいい。
「おはよ〜、梓ちゃん。翔太。」
寝癖をつけた真冬が玄関でひらひらと手を振っていた。
くすくすと梓ちゃんが笑って手を振り返す。
桜は散りかけで、アスファルトには桜の花びらが落ちている。
ひらひら、と目の前を踊るように散る桜の花びらが1枚梓ちゃんの髪の毛に舞い降りた。
「あ。梓ちゃん、桜が…」
『え、』
取ってあげると、ありがとう と笑う。
そんな梓ちゃんにドキドキと高鳴る胸。
幼馴染への、恋。
俺と梓ちゃんは結ばれる、そう思っていた。
・・・
ピリリリリ…
とけたたましくアラームが鳴る。
中学、高校の時のように愛しい幼馴染が迎えに来ることはない。
俺がすることは寝坊助な
「…はあ、」
梓ちゃんと結ばれると思っていた頃の自分を殴りたい。
大学生になって初めての夏の日、というか昨日…梓ちゃんは両想いだった彼方さんと付き合ってしまった。
……まあ、俺が仕向けたことだけど。
「こういう時だけ自分が嫌になる…」
昔から人のため、人のためと動き回っていたからかお節介を焼いてしまった。
好きな人を、両想いの人へ譲ってしまうなんて。
笑顔が見れるならいいと思っていたけど、実際はそんなことない。昨日なんか帰ってすぐに泣いてしまったし。
用意をして、真冬を起こしに行く。
他愛もない話をして大学まで歩いた。
"校門で待っとくね"
と梓ちゃんからのメッセージ。
今日は1人なのかな。
少し先にある大学の校門を見れば、
大好きな彼女は、隣にいる
.
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