【暗殺教室】あなたの視線の先には。Ⅳ (ページ31)

今日:10 hit、昨日:20 hit、合計:10,171 hit

＃172 ページ31

近くの木の根に鞄とジャケットを置いて

パーカーとスカートだけの状態になってから山に入った。
まぁ裏山使うって言っても、私はフリーランニングあんまり得意じゃないし

ちょっと石の上とかを移動して結局は木の上に落ち着いてしまう。

『自分で言うのもなんだけど、木登りやりすぎなんだよなー』

でも、いつも登っているこの裏山の木は、すごく見晴らしがいいし
風も気持ち良くて周りからは見えないと言う好立地。

私のお気に入りスポットだった。

ピピピ、とポケットから音が鳴り携帯を取り出すと
お母さんからの着信だった。

『もしもし、お母さん？』
【どう言うつもりだ、A】
『…お父さん』

お母さんからの着信のはずなのに、電話先から聞こえてきたのはお父さんの声だった。
バレたか、お父さんが怒ってかけてきたか、かな。

『…何？』
【話は家でする。早く帰ってこい】
『…はい』

完全に怒ってんなぁ。
こうなったら従わないとお父さん学校に乗り込んでくるかもしれないし…
従っといたほうが身のためかも。

『ただいま』

玄関のドアを開けて家に入ると、リビングの方から怒鳴り声が聞こえた。

「お前がこんなだから」とか「おまえのせい」とか
お父さんがお母さんに怒鳴ってるみたいだ。

『…ただいま』

リビングのドアを開けて二人に声をかけると、ハッとしたようにお母さんがこっちに近づいてきた。
どうやら私が声をかけるまで家に帰ってきたことに気がついていなかったようだ。

「お、おかえりA」
『…喧嘩なら他所でしてよ。近所の人に心配させちゃうでしょ』
「なんだ親に向かってその言い方は…お前の教育が悪いからだろう。どうしてくれるんだ」
「…すみません」

いつもは元気な母でも、さすがにお父さんには逆らえない、か…

『で、話って何』
「…お前もこっちに引っ越してくるんだA」

こっち…
お父さんの、家ってこと？

弟たちがいる、家ってこと？

『…なんで』
「こいつの教育が悪いせいでA組に復帰できないんだ。
　なら、お父さんの方の地域の進学校に転校して来なさい。
　そっちの方が、お前のためになる」

まただ、「私のためになる」なんて言って、私のことなんて考えてもないくせに。

『…いやだ』
「なんだと？」
『私は卒業まで絶対にE組に残りたい。
　私にはE組でやりたいこと…ううん、やらなきゃいけないことが、あるから』