【暗殺教室】あなたの視線の先には。Ⅳ (ページ2)

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＃144 ページ2

パン、と音がして
一斉に走り出す人たちと、それに声援を送る人。

体育会当日。
私たちE組も、白いハチマキを頭に巻いていた。

木村はリレーで
原ちゃんはパン食い競争。
前原とひなたちゃんは二人三脚、
カエデは障害物競走

暗殺の訓練で鍛えた基礎体力が、ここで活かされてきている。

『みんなすごいなぁ…ね、磯貝？』
「そうだな…」

私が磯貝の元へ行くと
磯貝はみんなで考えた棒倒しの作戦表に目を通していた。

その顔は、やはりどこか不安が混じっていた。

「…殺せんせー、逢坂…なんだかんだ言って浅野はすごいやつだよ。
　俺、とても及ばないんじゃ…」

見ていたメモ帳を閉じ、目を伏せた。

「そうですねぇ。君がどれだけ万能だとしても
　社会に出れば君より上はやはりいる。彼のようにね」

殺せんせーはそう言った。

「どうしよう…俺のせいで、みんなが痛めつけられたら」
「でもね、社会において一人の力には限界がある」

殺せんせーはそう言って磯貝にカメラを向けた。
カメラに気づいた他の男子達が磯貝の周りに集まる。

「仲間を率いて戦う力。
　その点で君は浅野くんをも上回れます。
　もし君がピンチに陥ったなら、皆がそれを共有して戦ってくれる。
　それは君の人徳です。
　先生もね、浅野くんより君の担任になれたことが嬉しいですよ」

殺せんせーはそう言って磯貝の頭に白いハチマキを巻いた。

照れ臭そうに笑って、「よし」と顔をあげた。
うん。いつもの磯貝だ。

『頑張れ』

周りに聞こえない程度の声で呟いた。

「…Aさんはクラスの人のことをよく見てますねぇ」
『殺せんせー程じゃないよ。
　浅野もあいつなりに努力してる。でもそれは磯貝もでしょ？
　努力の仕方も、その結果も、それぞれ違うんだから…磯貝は磯貝らしく。それでいいんだよ』

誰かに否定されようが、その人が努力してきたことに違いはない。
自分のことよくも知らない人に否定されて挫折するくらいなら、私は…

『私は、自分らしく生きたい。
　それでダメならしょうがない、それでいいと思うんだ』

自分に素直になることのなにが悪い？
好きでもないことして、誰かに縛られたまま生きるくらいなら死んだほうがマシだよ。

それに、今のクラスなら…

きっと、落ちるとこまで落ちてしまっても、このクラスなら大丈夫だって
そう思えるから。