＃132 ページ39
『…なんかちょっと心配』
「あぁ？テメェみたいな闇抱えてる奴よかマシだろ」
私がイトナの頬をつつきながらそう言うと、寺坂はそう言った。
…なんで知ってんの…
「寺坂…あんたどこまで知って…』
私がそう言っても、寺坂は無言で、そのあとはなにも話してくれなかった。
みんなが散り散りになり、遠目から見守る。
『これ、大丈夫かなー…？』
私はカルマとそこし離れたところで様子を見ていた。
「ま、あいつらバカだし。意外とうまくやれるんじゃない？」
そのあとは、村松の家がやってるラーメン屋さんに行き、吉田のバイク屋に行き…
なんか、いろんなところに放りまわされた挙句、最終的にはバイクの勢いで草むらに突っ込む…
『これ本当に大丈夫！？』
「…」
私がもう見てられない、とでも言いたいかのように少し声を荒げる。
カルマももうなにも返してくれなくなった…
「なんも考えてないみたいね…」
「まぁあいつら基本バカだし」
そうだった。寺坂組ってバカなんだった…
「で、でも…狭間さんは頭がいいので…」
必死に愛美ちゃんがフォローするも
狭間さんは何かの本をお勧めしていた。
遠目からじゃあんまり見えないけど…
『あれ絶対やばいやつだよ…一瞬復讐とか聞こえたんだけど…』
私がそう思ったのも当然。
さっきまで落ち着いていたイトナの様子がおかしい。
明らかに震え、今にも暴走しそう…
吉田や狭間さんがこちらに逃げてくる中
寺坂だけはイトナの前に止まって、真っ直ぐに見つめていた。
「無理のあるビジョンなんて捨てちまいな。楽になるぜ」
ビジョン…
なにも考えてなさそうに見えて、意外とちゃんと考えてたりするのかな、寺坂も。
シロに言われたことをそのまんま返しちゃってさ。
やっぱ何にも考えてないんだろうけど。
「うるさい」と叫んだイトナの触手は寺坂に一直線に向かった。
寺坂は足と腕でその触手を受け止めた。
一回やったからもう慣れたってか…
受け止められて困惑したイトナの触手は、するり、と寺坂から離れ
寺坂は「吐きそう」なんて言いつつもイトナに近寄って
殴った。
頭を一発…結構強めに。
「毎度負けたくらいでグレてんじゃねぇ！いつか勝てりゃいいじゃねぇか。
あのタコ殺すにしてもなぁ、今殺れなくていい。100回失敗したっていい。
3月までにたった一回殺せりゃ、それだけで俺らの勝ちよ」
本当のバカは、こういう時は役に立つんだから…
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作者名：Suu | 作成日時：2020年4月7日 1時
