＃109 ページ16
「悪い子たちだ…恩師に会うのに裏口から来る。
父ちゃんはそんな子に育てた覚えはないぞ…？」
私らだってあんたに育てられた覚えなんてこれっぽっちも無い。
言ってやりたいのに…今すぐにでも殴りたいくらいなのに。
体が震えて、動けない…
「仕方ない…夏休みの補習をしてやろう」
鷹岡は治療薬が入ってるであろうアタッシュケースを持って、歩き出した。
「屋上へ行こうか…愛する生徒たちのために、歓迎の用意をしてあるんだ。
付いてきてくれるよなぁ？お前たちのクラスは俺の慈悲で生かされてるんだから…」
そう言って、鷹岡は屋上への扉を開け、部屋から出て行った。
鷹岡の後を追って、素直についていくみんな。
ただ、私だけが動けなくなっていた。
「A…？」
カルマが後ろから肩を叩いた瞬間、私は膝から崩れ落ちた。
「A！？」
『あ、はは…まさか、あの一瞬の出来事が…
こんなにトラウマになって、体に恐怖を植え付けられてたなんて…』
「A…すごい熱。まさか…」
『お願いカルマ…みんなには言わないで』
「なんで…！」
『私は演技できるから。ちゃんと最後まで、演じ切れるから…ね？』
私はなんとか立ち上がって、遅れて屋上へ向かう。
後ろでカルマが私を止めようとしてくれているが、聞こえないフリをした。
「許されると思いますか、そんな真似が」
私たちが遅れて屋上に入った時、鷹岡とみんなが対峙していた。
「これでも人道的な方さぁ…お前らが俺にした非人道的な仕打ちに比べりゃぁなぁ！？」
鷹岡の目が、なぜか一番後ろにいるはずの私を、捉えた気がした。
私は咄嗟に下を向いた。
『…っ、！』
「お、おい…大丈夫か」
私が屋上に来て、たまたま近くにいた吉田に声をかけられた。
『な、何が…』
「おまえ、顔真っ青だぞ…？めっちゃ震えてるし…」
『大丈夫だよ。ちょーっと、トラウマが…ね』
私はそう言って、もう一度目線を前に戻した。
「落とした評価は結果で返す。受けた屈辱はそれ以上の屈辱で返す…
特に潮田渚！！俺の未来を汚したお前は絶対に許さん！」
鷹岡はそうって渚を指差した。
「背の低い2人を指定したのは渚が狙いだったのか…」
「かんっぺきな逆恨みじゃねーか…！」
私は震える足を演技でごまかし、前に出る。
「へぇ〜、つまり渚くんは、あんたの恨みを晴らすために呼ばれたわけ？」
『屈辱って…あんたが勝手に勝負を仕掛けて勝手に負けたんじゃん。自業自得だね』
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作者名：Suu | 作成日時：2020年4月7日 1時
