May all your dreams come true...【本編】 (ページ15)

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Fate/知念奏斗ページ15

普段なら、目にすることのないような路地裏に、その日はなぜか吸い込まれるように身体が向いた。高専の授業が終わり、提出していたレポートの手直しが残っている…というのに、だ。

奏斗は近くにバイクを止め、夕暮れでオレンジ色に染まった街の、“影”ともいえる暗闇を歩いた。後から思えば、ソイツとの出会いは必然であり…なんとなく気が向いて路地に吸い込まれたのも、柄ではないが“運命”だったのではないかとすら思えてしまう。

コンクリートの隙間に、荒れた息が反響する。
第六感が、奏斗の脳に危険信号を点滅させた。

それでも、足が前へと進む…
なぜだろう―――この先に

進まなければいけない何かがあると、感じたから。

「えっ…？！」

奏斗は思わず足を止めた。
コンクリートにもたれかかる様に倒れ込むのは、血まみれになった人……
まるでドラマの一シーンの様な光景は、平和に過ごしてきた奏斗の頭を狂わせる。

「君、大丈夫か？！」

駆け寄り、体を起こす。
少し動かしただけでも顔をしかめるその少年は、血まみれの腕で腹を押さえるように蹲った。

(―――骨折してる……？)

咄嗟にそう判断できたのは、状況が違えど似たような症状を見た事があったから。

高速走行するバイクレースでは、一瞬の判断ミスや一度の転倒が命どりになる。
フルスーツにガチガチのフルフェイスを被って装備を整えても、命を落とすことだってある。もう二度と、バイクに跨ることが出来なくなることも―――そんな人たちを、ずっと見て来た。
そして、そんなレースに、奏斗自身も身を置いているのだ。

周囲に、“彼”以外の人間はいない。状況から見て、何かのトラブルに巻き込まれたことは確かだろう。笛のように鳴く息に、危険を感じた奏斗は慌てて携帯電話を握りしめた。

「救急車を―――場所は５番地大通りを入った路地裏で…血まみれのけが人を発見しました。恐らく内蔵損傷か骨折を……」