May all your dreams come true...【本編】 (ページ13)

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空蝉/竜胆リュウページ13

「いってきます」

「いってらっしゃーい！」

母の元気な声に背を押されながらドアを閉める。今日は休日なので学校はない。ホントは家でゲームをしたかったのだが家にいてばかりじゃ体に悪いと母に追い出されたのだ。

なにすっかな、とおれは足を動かしながら周りを見渡した。ホントになにもないなぁ、なんて言葉を飲み込みながら歩き続ける。ふと子供の声が聞こえてきて立ち止まると、近くに公園があった。

久しぶりに行ってみるか、と足を公園に向けると、サッカーボールがコロコロと転がってきたのでなんとなくそれを手に取ると『お兄ちゃんサッカーやってるの？』という声が聞こえてきた。

「いや、やってない」

「簡単だから一緒にやろうよ！」

断ろうと口を開いたが少年は聞く耳持たずにおれの手を無理やり引っ張って公園に案内した。めんどうなことになったな、と頭を抱えそうになったがなんとか持ちこたえた。

「オレが蹴るからお兄ちゃんがゴールキーパーやってね」

それオマエが楽しいだけだろ、と頭の中でツッコミを入れる。まあ暇だしやってやるか。おれはボールを掴む構えをした。

「え、お兄ちゃん絶対サッカーやってたじゃん！何その構え！」

「普通だろ」

「普通じゃないよ！」

「いいから早く蹴れ」

少年はおれの言葉に渋々ボールを足元に起き、蹴るフォームに入ると足に力を入れて思いっきり蹴った。するとボールはおれのほうではなく全く別の場所に飛んでいってしまいおれと少年は思わず顔を見合せた。

「マジかよ」

「ヘタで悪かったな！」

いやまだだれもヘタとは言ってないんだが、なんて思いながら飛んでいったボールを取りに行く。公園に戻ると少年は落ち込んだ様子でベンチに座っていた。

「おい」

「オレさ……もうサッカーやめようかな……これでもいっぱい」

「練習するぞ」

少年の言葉を遮るように言うと、少年は驚いたような表情でおれを見上げた。

「オマエがたくさん練習してることぐらいボールを見ればわかんだよ。このままやめたらオマエの負けだ。もったいねーじゃねーか」

少年は手をギュッと震えるぐらい握りながらなにかを決意したような表情で『お兄ちゃん、名前なんて言うの』とおれの目を見た。

「竜胆(りんどう)リュウだ」

焦げ茶色の髪とペリドットの瞳がふわりと揺れた。