つよいひととこわいひと (ページ27)

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その他にも、メガネをかけている状態だとIQが低くなったり
車のハンドルを握らせちゃいけない人だということも分かった。

そんな一癖も二癖もある人だが、失礼だが意外にも教え方は上手だった。
自分の飲み込みが早いのかは知らないが、先輩から教わったことはスッと
脳に入ってくるのだ。

仕事にも慣れてきた時期に、暴力団の事務所を摘発するという
任務にあたることになった。末端ではあるが、その組織の実情を知るには
うってつけらしい。

当日、先輩と複数の警察官と共に、俺は合図が出たらすぐに突入できるように
備えていた。

そして合図がきた瞬間に奴らの事務所に突入する。
中には十数人の男がいて、逃げ出す者や暴れだす者など様々だ。

とにかく全員の身柄を拘束するためにまず近くにいるやつから片付けていく。
少し手間取ったが他の人がサポートに回ってくれたので無事に拘束できた。

続いて他の奴の拘束に取りかかろうとしたとき、一つの銃声が鳴り響いた。
撃ったのはまだ捕まえていない男の一人。幸い、誰にも当たらなかったようだが
こんな室内ではいつ被弾するか分からない。

先にアイツから仕留めるか、
そう思い標的を変える。しかしその瞬間またもや銃声が鳴り響いた。

また同じやつが撃ったのかと確認したが違った。
その男は壁にすがり付くようにして、顔を後ろに向けている。
額には汗がびっしりと浮かび上がり化け物に追い付かれたかのように
その表情は怯えていた。そしてその顔のすぐ横の壁に銃弾がめり込んでいる。

俺はゆっくりとその男が見ている方向を見た。

そこには、五年前、俺のチームを半壊させ敗北に追いやったあの女、

氷達霧緒が立っていた。

まだ煙が出ている銃口を向けて立っている。
その姿を見た瞬間、氷達先輩があの時の女だということを思い出していた。
声に聞き覚えがあったのは、あの時に聞いていたからだった。

なぜ今の今まで忘れていた？

あの時は少し距離が遠かったから顔もはっきり覚えているわけではなかったが
拳銃を持って佇むその姿は五年前と一緒だった。

だが、明らかに一つ違う点がある。
表情が、オーラが、違う。
命をかけた仕事だというのは百も承知だが、戦いという点において
あの時とも普段からも想像出来ないほど、その視線は冷たかった。

今までに見たことがないほどの凍てつく氷のような眼差し。
この時初めて、この人を心から恐ろしいと感じた。