つよいひととこわいひと (ページ23)

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誰かに言われるまでもなく、副リーダーを除く俺達三人は囮と思われる
女子から周囲に警戒を向けた。

もしかしたら既に包囲されているかもしれない、とネガティブな考えが
脳を占めていく。

大丈夫だ、俺なら、きっと。

自分を落ち着かせる為に己を励ますが、それでも心拍数が上がっていくのが分かる。
アサルトライフルを握る手にどんどん汗が染み出ていく。

こんな状態ではしかるべき時に撃てないと思い、ジャケットの裾で強めに手のひらを
拭う。

その時、通信機ごしに副リーダーの悲鳴が聞こえた。
俺達は彼の安否を確認しようと声を上げたが、返ってきたのは副リーダーが
やられた、という運営側からの連絡。

一体誰に、そう思って副リーダーがいたはずの場所に目を向ければ、
先程の女子が右腿のホルダーから拳銃を外していた。

彼女の体勢を見れば、撃った直後だということはすぐに分かった。

副リーダーをやったのは、あの女だ。

脳が殴られたような衝撃を覚えた。
まさか、あの先輩が女一人に負けるなんて。

誰よりも早く部活に来ては、一生懸命練習していたんだ。
厳しい人だったけど同時に頼れる先輩だった。

大会もすごく楽しみにしていたんだ。そんな人が、やられてしまった。

沸々と感情が沸き上がる。このまま負けるものか、

優勝を勝ち取るのは俺達だ。

改めて決意をかため、銃を握り直す。
まずはアイツを、と思ったとき通信機から声が聞こえてきた。

「あの女！ぜってぇ殺してやっからな！」

声の主は部で一番の実力を持つ二年の先輩。
そういえばあの人は副リーダーと親友だって言ってたな。

隠れていた茂みから飛び出ると先輩は真っ直ぐにアイツに
向かっていった。既に彼女は自陣に戻ろうとしていたが、そんなこと
誰がさせるか。

先輩の援護射撃をするように再度、照準を合わせる。
幸いこちらには気付いていない。

完全に先輩に意識が向いている。
猪突猛進していく先輩を狙って何発か撃つがそれは当たらない。
先輩が全速力で走りながらもジグザグに蛇行しているからだ。

大分焦っているように見える。

今しかない、と引き金に指を置いた瞬間、
弾がこちらに向かって飛んできた。

「え…」

当たりはしなかったものの俺が隠れていた壁の下にBB弾が落ちていた。
あと数センチずれていれば、壁から少し体を出していた自分に当たっていた。

弾が飛んできた方向を見れば、やはりあの女。