つよいひととこわいひと (ページ22)

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いつかの敵は今日の上司ページ22

俺がまだ高校１年だったころ、友人に誘われてノリでサバゲー部に入部した。
思っていたよりもずっと本格的で、元々入ろうとしていたサッカー部に入らなかったことは
今も後悔していない。

うちの高校は全国大会常連の猛者で、一般参加の大人達からも一目置かれていた。
俺は部長や顧問に実力を買われて、１年で大会に参加するメンバーになった。

ゲームが始まってからは先輩の指示を聞き入れたり、自分を信じて戦っていた。

気付けば残っているチームは俺の高校とあと一つ、北海道の高校だった。
少し前までは同好会だったが正式に部活と確立してから、界隈では有名な
強豪校になったらしい。

でも俺は勝てると思っていた。先輩は強いし、自分の力に酔いしれていたから。

あの事が起きるまでは。

結局2チームしか残っていないのでゲームは膠着状態。
お互いどちらが先に仕掛けるか、動向をうかがっていた。

痺れを切らしたこちらのリーダーが攻めよう、と俺らに言おうとしたとき、
真正面から誰かが走ってきた。

一瞬チームメイトかと思ったが全員視界に映っている。

なら答えは一つしかない。敵だ。

俺達は洗練された動きでそれぞれの位置につき、銃を構える。
敵の姿を確認しておこうと思い、自分が隠れていたコンクリートの低い壁から
少しだけ顔を出した。

こちらに向かって走ってきていたのは女子だった。
珍しい、と思いながら敵の武器や行動を観察する。

手には何も持たず、両腿にホルダーがついていてそれぞれ拳銃が二丁。
迷彩のズボンにジャケット、Tシャツを中に着ていて文字が書いてあるが彼女の
動きが素早いためよくわからない。

その時にリーダーからの指示が入った。
後方の敵影は今のところなし、敵を殺るなら今だ、と。

その指示に即座に対応し、照準をヤツに合わせる。
もう少しで殺れる、そう思ったがどこか胸騒ぎがする。

本当にこのまま撃っていいのか？
リーダーが間違っているとは思わない、どっちみち数少ない敵を減らせるチャンスなんだ。

意を決して引き金を引こうとした瞬間、待て！！と通信機ごしに大きな声が聞こえた。
声の主は副リーダー。彼の言うには「あの高校の奴らがそんな無計画なことをするわけがない」
らしい。

ならたった一人で来たのはこちらの統制を乱す為？
それとも、

「囮…」

俺が呟いた言葉に対して、通信機から息を飲む音が聞こえた。