つよいひととこわいひと (ページ3)

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「厄介なことに巻き込まれて、そこから脱け出すのに手間取っただけ」

ホロは手短に、ジェノに伝えると羽織っていたケープを脱ぎハンガーにかけた。

「厄介なこと…？まさかお前、奴等に尻尾捕まれたんじゃねえだろうな？」

ジェノの顔が途端に険しくなる。今にもホロに掴みかかりそうな勢いだ。
しかしホロは、まさか、という風に肩をすくめた。

「少なくともそれはない。まあ、人、いや、子どもと会ったのは事実だけど」

「子ども？」

ジェノの問いに頷き、奇妙な部屋で起こった出来事、一緒に閉じ込められていた不思議な
力を持つ少女のことをホロは伝えた。

「超能力ってやつか、そのアマネって子どもが使ったのは」

「恐らく」

ホロがジェノの言葉を肯定すると、ジェノはハッと鼻で笑い挑発的な笑みを
その端正な顔に浮かべた。

「おいおい、まさかそんな存在すらも疑わしい力にビビって攻撃を止めたのか？
　相手は子ども、ましてや女だぜ？」

ジェノの挑発的な言葉にため息を一つ吐きホロは答えた。

「無駄なエネルギーの消費を防ぐためにわざとそうした、それに…

　プログラムされていない技術を駆使して戦う敵をどう倒すの？」

真剣な眼差しで聞き返したホロに、ジェノは押し黙った。

「話はこれで終わり、グロリスも寝ているから早くそっちも
　終わらせて電気を消して」

ホロはそう言って机の上に視線をよこした。そこには数種類のナイフが
並べられてあり、すぐ横にはナイフの手入れをする器具や研ぎ石なども置いてある。

それらを一瞥したホロはジェノに背を向けて、部屋の隅に向かった。
そこには冷蔵庫程の大きさの巨大な四角い機械が、そのボディに走るラインを
発光させながら佇んでいた。

すぐ横には一人がけのソファが二つ並んでいる。
その片方にホロは腰掛けると、床に伸びていたコードを拾い上げた。
それの端は先ほどの機械に、もう一方は黒いリストバンドのようなものに繋がっている。

ホロはそのリストバンドを左手首に装着すると、ゆっくりと目を閉じた。