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八話 ページ9

「…まふまふ、」

「は、はい、!」

寮について、部屋に入ればそらるさんに抱き締められた。

いつの間にか肩に力が入ってたのか、それが抜けていく。

「…怖かったでしょ、…大丈夫だよ、俺がついてる、」

僕でも気づけない僕の恐怖にそらるさんは気づいてたみたいだ。
震えていた手をさらに強く絡めて握り、あいたもう片方の手で僕の頭を撫でた。

「…そ、らるさ…、」

過去に何があったのかは話している。
そのときも同じように僕を抱き締めて、優しい言葉をかけてくれた。

嬉しい、けど…、…僕じゃなくて、もっと可愛い女の子にするべきだと思う。
そらるさんはとにかくモテるし、可愛い女の子だって望まなくても沢山よってくるのに。

でも、女の子にも同じことをしてるのかな、って考えると、胸がいたくてしょうがなくて。

その温もりを感じると、涙が溢れてくる。

「…まふまふ…、?…どうした…、?…昔のこと、思い出した…?大丈夫だよ、俺がいるから、守ってやるから、」

あぁ、話したときも同じようなことを言っていた気がする。

「…そら…、…ぅさ、んは、」

ぎゅう、と彼の服を掴む。

「…他の、子、にもっ…、…こんな風にっ、や、さしいの…、?」

最低だ。
僕だけじゃないに決まってる。
何、自惚れてるんだよ…。

でも嫌だった。
そらるさんが他の人にもこうやって接しているのが。

ぎゅう、と目をつむって、長い沈黙と重い空気の中をやり過ごす。
やっと聞こえたそらるさんの言葉は僕が待ち望んでいた答えで。

「…何言ってるの、お前だけだよ。」

くしゃ、と髪を撫でる手が少しぶっきらぼうになって、でも、暖かかった。

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作者名:桜餅@そらなー | 作成日時:2019年5月14日 18時

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