【歌い手】Is she loved by…？

二十六話。 ページ28

元々の動画。

それは私が花ちゃんの部屋に入り、まふまふさんがどうのこうの、と話をして、詰め寄った瞬間に、いつの間にか花ちゃんのお腹にナイフが刺さっているというものだった。

『…このあと、倒れる動画が流れますよね、そこがやはり、合成されていました、』

送られてきた動画は、元の動画では刺したあと平然に去っていくように見える私がいるのに、実際の動画では、死角で自分にナイフを刺し、一人で勝手に倒れていく彼女だった。

「…ふ、決まったな、」

そらるさんの勝ち誇ったような声が聞こえる。
だが、口元は、笑っていなかった。むしろ、声にあわない、怒りの表情を浮かべていた。

「…あの、バカ四人の目を覚ましてやらないとですね、」

まふくんがおどけたように言う。
本人は笑ってるつもりなのだろう。その顔は酷く歪んでいた。
けど…誰も指摘できなかった。

この二人が明るい方へ持っていってくれるのを、崩してしまうからだ。
だから、私も。

「…えぇ、はやく…、前みたいにバカをやりたいです、」

私は上手く、笑えてただろうか。

私を見つめていた96ちゃんの酷く歪んだ顔が目に焼きついて離れなかった。

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