19. ページ19
.
何、泣いてるんだろう。
いい歳した大人が。こんなところで。
分かってたはずじゃない。彼には帰るべき場所があるって、待ってる人がいるって。
今更、何でこんなに悲しいの。
きっとこれは天罰だ。
私が少しでも欲張ったから、会いたいなんて彼に伝えようと思ってしまったから。
贅沢だと神様が怒ったんだ。
自業自得だ
そう言い聞かせたって涙は止まってくれなくて、溢れて来るばかりで。
「.....A、先生？」
聞いたことある。ううん、いつも聴いてる、その少し高めの透き通った声。
「な、がせくん...？」
「やっぱり...先生やんな、？」
彼が私の顔を覗き込もうとするのを必死で手で隠す。
やだ。今こんな状態で彼にどんな顔を見せたらいいの？涙でびしょ濡れな頬をどう言い訳したらいい？みっともない。そう思われるに違いない。
「.....」
彼は無言で立ち去った。
今まで溜めていた息を一気に吐き出す。嗚咽でうまく吐き出せ無かった分も一気に。
幻滅...させたかな。
「はい、これで冷やして」
息を切らしながら戻って来た彼が私に水を差し出した。
「綺麗な顔が台無しですよ」
なかなか受け取ろうとしない私に半ば強引に水を握らせると隣に腰掛けそっぽを向いてしまった。
「...ありがとう」
「よかった。独りじゃなくて」
息を吐くようにそう呟いた彼は暗くてはっきりと見えないけれど。
ビルの明かりでも車のライトでも電飾でもなく、綺麗な真っ白な月の光に照らされたその横顔は微笑むように優しく口角が上げられていて。
そんな彼の温もりにまた涙が溢れそうになった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 282人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「永瀬廉」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
西瓜(プロフ) - こもねさん» コメントありがとうございます。とても嬉しいお言葉、感謝します。頂いたお言葉を励みに両作品とも更新頑張って行きますのでよろしくお願い致します。 (2018年5月17日 3時) (
レス) id: 66c14fc432 (このIDを非表示/違反報告)
こもね(プロフ) - はじめまして。西瓜さんの細かく的確な描写が大好きでいつも楽しみにしています。狂想共に更新頑張ってください！＾＾ (2018年5月16日 18時) (レス) id: b89f9c806b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：西瓜 | 作成日時：2018年4月20日 21時
