13. s ページ13
Sho
「おかえりなさい」
俺はこの柔らかいたんぽぽの様な雰囲気を纏う彼女の笑顔が好きだ。
「ただいま」
彼女の頭を撫でるとはにかんだ笑顔を見せる。
それを確認して部屋の中に入る。
俺の背中越しに悲しみの影を隠した表情をしているのを知っている。自分がそうさせているという事も知っている。
たんぽぽはいつか綿毛になって遠くに飛んで行ってしまう。
「今日は早めだね」
「うん、中日やからな」
「そっか。お疲れ様」
そう言って彼女がお茶を出す。これもいつもの事だ。彼女は気が効く。
するとコップを持つ人差し指に小さな切り傷から少し血が固まっているのが見える。
「どうしたん、これ」
「ん？...ああ、ほんとだ」
彼女はこう見えて意外と鈍臭いところがあるのでこの傷を作ったのも覚えていないのだろう。
「今日階段から落ちそうになった時のかな」
「え？大丈夫やったん？」
「うん。転けそうになったとこで助けてもらった」
「へぇ、その人反射神経いいな」
何気なくそう返して何気なく彼女の方を向くと何かを思い出した様に柔らかく笑った。
「少女漫画のね、ヒーローみたいな子に」
「ヒーロー？」
「そう。私からしたら恩人なんだけどね」
彼女がそのヒーローとやらを思い出してまた頬を緩める。俺が大好きな笑顔だ。
「ふーん...」
俺がこんな感情を抱く資格はないのは分かっている。
でも、俺以外を、俺以外の男を思い出してそんな表情しないで欲しい。仮に生徒だとしても。彼女に気がなくても。
俺の手に収まる彼女の手の人差し指のその傷を小さく音を立てて吸う。
「ちょっ...」
ピクリと小さく体を跳させ、目を丸くした彼女がこちらを向く。みるみるうちに頬が紅く染まる。こんな事でそんな反応を見せる彼女が愛おしい。
「消毒な」
色んな意味を込めた俺のその言葉は醜い感情を含んでいて。
ああ、大人気ない。
でも彼女のこんな表情を見れるのは、彼女の心を動かせるのは俺だけだ。
そう牽制するように俺の口は彼女の指から唇へと移動する。
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西瓜(プロフ) - こもねさん» コメントありがとうございます。とても嬉しいお言葉、感謝します。頂いたお言葉を励みに両作品とも更新頑張って行きますのでよろしくお願い致します。 (2018年5月17日 3時) (
レス) id: 66c14fc432 (このIDを非表示/違反報告)
こもね(プロフ) - はじめまして。西瓜さんの細かく的確な描写が大好きでいつも楽しみにしています。狂想共に更新頑張ってください！＾＾ (2018年5月16日 18時) (レス) id: b89f9c806b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：西瓜 | 作成日時：2018年4月20日 21時
