12. r ページ12
Ren
教室にタオルを忘れた事を思い出して慌てて取りに戻る。
部活が始まる時間が迫っていたので近道である離れの校舎の渡り廊下を通ってグラウンドへ向かう途中、強い風が吹いたと共に白いプリントが目の前を舞う。
近道してよかったと思った。
彼女の体に傷ができるところだった。
受け止めた体は華奢だが腕に感じる女性特有の柔らかい感触に心臓が煩く音を立てる。
一気に全神経が腕に集まったかのように意識してしまう。
「ありがとう」
彼女の声が耳の奥で反復する。
甘過ぎない心地いい声色。俺は彼女の声も好きだ。
「永瀬くん！」
余韻に浸っていると何処からか声を掛けられて振り向くと見た事のない女子が立っていた。
「なに？」
部活に間に合わないかもしれないという状況を思い出し、焦る気持ちを隠して出来るだけ優しい言い方で彼女の先の言葉を促す。
「あ、あの、ちょっといいですか？」
遠慮がちに聞く割には彼女の足は裏庭に向いていてなんとなく状況を察し、渋々彼女の後を着いて行く。
「ずっと...好きでした。私と付き合ってください」
中庭に着いたかと思うと振り返って頬を染めながら俺の顔色を伺う。
「...ごめん」
「...そっか...好きな人、いるとか？」
「うん、まあ」
誰？なんて聞かれたって苦しくなるだけだという事は分かっているので、これ以上は聞いてくるなというつもりで曖昧な返事をする。
「分かった。」と言って走り去って言った女子を見て羨ましく思う。
好きな人...彼女は俺の中では間違いなくそれに該当する。
だけれど俺はその彼女に想いを告げる事はもちろんのこと、気持ちに気付かれる事だってあってはならない。
今の女子のように真っ直ぐに想いを告げられる関係にあったら俺は何度だって彼女に「好き」をぶつけるだろう。そうなれたらどれだけ幸せだろう。
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西瓜(プロフ) - こもねさん» コメントありがとうございます。とても嬉しいお言葉、感謝します。頂いたお言葉を励みに両作品とも更新頑張って行きますのでよろしくお願い致します。 (2018年5月17日 3時) (
レス) id: 66c14fc432 (このIDを非表示/違反報告)
こもね(プロフ) - はじめまして。西瓜さんの細かく的確な描写が大好きでいつも楽しみにしています。狂想共に更新頑張ってください！＾＾ (2018年5月16日 18時) (レス) id: b89f9c806b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：西瓜 | 作成日時：2018年4月20日 21時
