幸せな家族のはなし３ (ページ40)

今日:9 hit、昨日:1 hit、合計:153,321 hit

［１０］変わらない笑顔ページ40

翔side

「みんながいるだけで、俺は幸せだって思える」

真っ直ぐな智にぃの瞳と、強く一途な言葉。

それは誰にも左右されることはない、
智にぃの確固たる貫いた意志だ。

普段何事も主張したりしない分、
ここぞという時にくる智にぃの言葉は重い。

けどそれは決して間違ってはなくて。

「今言ったこと、俺の本心だよ」

色々と迷走している俺を宥めるように、
そして少し叱るみたいに紡がれる声。

それを聞いちゃえば
俺は何も言えなくて。

「ねえ、翔」

伺うように智にぃが俺の顔を覗く。

そしたら眉を下げて寂しそうな顔をするから
多分、今俺は情けない顔をしてるんだと思った。

「そんな顔しないでよ。
ほら、翔も俺と同じ気持ちでしょ？」

智にぃが困ったように手を伸ばして俺の頭に触れる。

その手は幼かった頃から
ずっと感じてきた智にぃの優しさで。

だから俺もぎこちなく、
こくんと頷いて返事をする。

「うん。
俺も今が……家族がいることが幸せ」

俯きがちだった顔を上げて、
そこだけでもちゃんと伝えた。

俺の思いが一欠片でも、成就した言葉が少しでも
安心して智にぃへ届くように。

そしたら智にぃは、ふっと眉を下げて。

「んふふっ」

昔から変わらない笑顔で
俺の頭に置いていた手をわしゃわしゃと撫で上げた。

その優しい声色は俺の胸にじんわり広がって、
最近の疲れや悩みが和らぐように染み込む。

相変わらず、智にぃは凄いわ。

俺の頭を撫でる智にぃに預けて目を閉じる。

それからまたしばらくして目を開けたら
再びその柔らかい笑顔があって。

「……」

一体、どれだけこの智にぃに
助けられただろうか……。

思えば昔からずっと、
俺達が大好きな智にぃの笑顔があった。

嬉しいときも楽しいときも、
悲しかったときも、落ち込んだときも。

必ずと言っていいほど智にぃは
俺達に笑顔を向けてくれた。