幸せな家族のはなし３ (ページ22)

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智side

目を閉じれば、
みんなの柔らかい声が
鼓膜を震わせていく。

「あっ、一番星！」

高揚した翔の声で視界を広げれば、
夕日と夜が交じった空に光るひとつの星。

なんか、いいな。

綺麗。

そんなノスタルジーな気持ちに酔いを預けて
ソファーへ全身を沈みこませる。

それからグラスに残った
ビールをぐびっと飲み切って。

夏の大三角形だっけ……
それは見れるかな。

そういえば一番星って、いつも同じ星なのかな。

名前とかあるのかな。

いや、ないのかな。

ふわふわと泳いでいく思考で
ぼんやり疑問を抱いてみる。

あとで翔に聞けば分かるかな。

確か天体観測好きだったし。

「そうだ！このあとデザートあるからな～！」

「なになに？叔父さん買ってきてくれてるの？」

「おう！知り合いにパティシエがいんだよ！」

「えぇー！凄いねそれ！」

「ね、潤はお菓子とか作らないの？」

「ん？ああ、実は最近
挑戦してみようかなって思ってたところ」

「えっ！マジで？！
潤！完成したら絶対俺に食わせて！」

「はいはーい！俺モンブランがいい！」

「俺はなんでもいい。
あ、けど生クリームは少ない方がいいな」

「んじゃ俺はフルーツタルトよろしく！」

「いや叔父さん大阪じゃん！笑」

穏やかな優しい会話が心地よく
夜に変わりだす空へ広がっていく。

それを俺は愛おしく黙って眺めながら、
いつまでも響くみんなの笑い声に耳を傾け続けた。