幸せな家族のはなし３ (ページ16)

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［４－３］ページ16

智side

「あれっ、智にぃ海行った？」

「んーん。まだ行けてない」

キッチンから完成したお刺身たちと
残った魚介類が入るトレーをテラスのテーブルへ
持ってきたとき、和がひょっこりと現れる。

隣を見れば叔父さんと翔、雅紀が
網で焼かれた丸ごとのオマール海老を
大興奮で切り分けていて。

「じゃあプールは？」

「それもまだ」

「え～勿体ない！」

「またあとで入るから。笑」

朝からずーっと口角が上がってる和は
久々に子供っぽさ全開。

こんなんじゃ夜までもたないな。

和、すぐ寝ちゃいそう。笑

あーほら、今だってこんなに……

暑さと楽しさで気持ちが高揚してる和の顔へ
そっと触れると、とても熱い。

全員が気をつけ合ってるから
水分補給も怠ってはないけれど、
さすがに初夏といっても夏。

たっぷり分厚く塗った日焼け止めすら
焦がすように和の白い腕がピンクに染まってる。

……って。

あれっ？

「和？帽子は？」

取り皿を並べながら、和へと問いかける。

確か雅紀と潤でコソコソと外で何かしてるときに
麦わら帽子を渡していたはずだ。

似合うだろうと、叔父さんが
俺達に買ってくれていた麦わら帽子。

薄めの麦色に5つとも色が違うシルクのリボンが
付いているのがポイントだと話していた。

「あ、ほんとだ。かぶってない」

帽子の存在に和も気づいたらしく
自分の頭をペタッと触る。

「もー。ちゃんとかぶっててよ」

周りを見渡して、和の麦わら帽子を探す。

長い3人がけのソファーに
リボンが赤と紫の麦わら帽子が2つ。

これはさっきまで外に出てなかった翔と
料理のためにキッチンへ行った潤の分だ。

んで、奥のリビングに置いてある
リボンが青の麦わら帽子は俺の。

リボンが緑の麦わら帽子は
今雅紀が首に掛けてるから……

「ほんとにどこにやったの？」

「んーとね……確か雅紀にぃと潤と行って、
それでまたプール入って、ジュース飲んで……あっ！」

思い出したと告げるよう、和の声と顔が上がる。

「サーフボードの下だ！」

「あー……あそこのやつの下？」

「うんっ。取ってくる！」

前にあるプールの奥側に
いくつか並べられているサーフボード。

和が言うには海から戻ったあと、またプールに
入るからとそのサーフボードの影に置いたらしい。

ちゃんとこっちまで来て置いてけばいいのに。笑

と、思っていれば。

突然向かっていた和が、くるりと方向を変えた。