幸せな家族のはなし３ (ページ32)

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［７－５］ページ32

雅紀side

「雅紀～、元気出せ？」

「翔にぃ」

「ほら、今回は智にぃと接戦だったんだし、
次やったら勝っちゃうかもしれないよ」

「ん。ありがとう。

……まあさっき翔にぃが一番笑ってたけど」

「んん"っ！

それはごめん雅紀っ、マジで面白かった！！！」

素直に懺悔した翔にぃは謝りながらも
思い出し笑いを始める。

俺は「もう～！」なんて言いながら案外
翔にぃの子供っぽい姿が好きだから気にしない。

むしろ久しぶりに見たよ
大爆笑して死にかけてる翔にぃの姿。

「雅紀にぃ～、ほい」

「うわっ？！」

ソファーへ座る俺の頬に
後ろから何かを当てられる。

それがあまりにも冷たくて驚くと、
回り込んだ和がアイスを持ってきていた。

「これ、半分こ」

「え、ありがとう」

「ん。
また、ババ抜きしよ」

「へ？」

「雅紀にぃが勝つまでね」

パキッと半分にアイスを分けて、その片方を
俺に押し付けた和は何事もないように背を向ける。

素っ気なく言葉を残したまま。

けど今のは意地悪とかじゃなくて。

「……ありがとう、和」

「それはさっき聞いたよ」

お礼を伝えると、頬を赤くして和がはにかむ。

それから潤の元へと片方のアイスをくわえて
和はリビングをあとに。

照れくさそうにはにかんじゃって、可愛い～。

傍から見れば分かりにくい和の優しさ。

けれどその和の考えはちゃんと
俺に届いていて、思わず口角が上がる。

いつも俺の小さな気持ちだって逃さず和は
感じ取って機転をきかせてくれていた。

俺はそんな和の昔から変わらない器用さと
でもちょっと不器用なところが大好きで。

だから今のも、和の器用で不器用な思いが
わかって胸の内が熱くなる。

「雅紀。俺も何回でも付き合うよ」

「ありがとう」

隣にいた翔にぃも和の意図を読んでいるらしく
微笑みながら俺の頭を撫でてくれた。

それから翔にぃはバルコニーへ向かい、
俺はそのままソファーで氷のアイスをかじる。

「美味しい」

そして嬉しい。

こんなにも俺の家族は優しいなんて。

毎日、毎日
すっごくあったかい。

今度、和と一緒にラーメンでも食べに行こうかな。
それでゲーセン寄って、いっぱい遊んで。

「ん～！」

そう考え出したら止まらなくなってきた！

絶対和を誘ってみよう！

多分、「外は嫌だ～」なんて言われるだろうけど。
でもきっと、結局は付き合ってくれるはずだから。

「あー……幸せぇ～……！」