［４−２］ ページ32
潤side
「まあちゃんと取りに来たんだから偉いじゃん。
それより和、大丈夫か？ 顔赤くなってきてるけど」
「あー、自転車だしすぐだからって
帽子被ってきてないんだよね」
「ええ？ それダメだって。熱中症になる」
「んー」
和の赤く染まり始めた頬へ
手の甲を押し付けるとじんわり熱い。
こりゃ早く帰さないと
本当に熱中症になるな。
和は人より少し体が弱いし、帽子も被らず
直射日光なんて浴びてたら絶対頭痛くなる。
「これ。俺の帽子被って帰りな」
「ううん。いいよ。それ潤のでしょ」
「これ予備だから大丈夫」
「そうなの？ じゃあ被っとく」
軽く和の頭へ野球帽を乗せると
自分でグッと目深に被り直す。
これなら帰るとき多少暑くても大丈夫だなって
俺が帰そうと思った矢先。
突然和がニッコリと俺へ笑いかける。
「この後は？ また午後練？」
「いや、練習試合。隣の高校が来る」
「じゃあここですんの？ 俺それ見たいな」
「はっ？ いや暑いから止めとけって」
「ちょっとくらいなら大丈夫だって〜。
ここに居るから。ね？」
何故かグーサインを出した和は
「見ていいよね〜？」ってその場にいた
仲間達まで巻き込み始めた。
それに聞いてた仲間の2人が
「いいんじゃねーかー」って反応。
いや、今は元気だからいいけど……
「あ、それ俺と一緒！」
「え？ ほんとだ！」
「じゃあ、ここで見てるなら俺の貸すよ」
「俺もあるから使っていいぜ」
「やった、ありがとう〜」
「和也だっけ？ 俺は潤と同じクラスの〜」
……うん。聞く気ないな。
こりゃ1ゲームくらい見せて帰らせた方が
まだ納得してくれるわ。
「あー、潤から聞いたことある名前だ！」
「おっ、マジで？」
「え〜、和也俺は〜？」
にしてもさ。
たかがハンディ扇風機が一緒なくらいで
馴染める和マジ恐ろしくない？
インドアで人と関わるの好きじゃないくせに
こういう、人に入り込むのが異常に上手いんだよな。
「和、これ塩飴。
苦手かもしんないけど舐めとけ」
「ん、ありがとう。潤も気をつけてね」
「おう。絶対無理しないことな」
「はいはーい。
潤も、ちゃんと見とくから頑張ってね」
まだ試合に出れるか分からないのに
当たり前のように出る前提で声援を送る和。
まあ今日はコンディションもいいし、
もし出れたらいつも応援してくれてる
和のためにも全力で頑張らなくちゃな。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 391人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あやりゅ。 | 作成日時：2019年6月19日 0時
