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はじめに否定しておくと、事実無根である。たまたま、既にデビューしていた事務所の男性と2人でいたところを撮られてしまった。月末評価が近く、なにか相談に乗れそうなことがあるなら、と彼の方から申し出た。私はともかく、彼はそこそこの知名度を持ったアイドルだったから、個室の居酒屋を予約し、そこから出る私たちが運悪く週刊誌に撮られ、という次第である。
あろうことか先輩は全ての責任を私に押し付けたのだ。なぜか事務所も先輩を守ることに必死で、私に詳しく事情を聞くことすらしなかった。幸いにして私は非公開練習生だったから、適当な憶測とバッシングに飲まれても、名前や顔が知られることはななった。
ただ、それがきっかけでデビュー組から外されたのだ。練習生自体を辞めるところまで強いられなかったのは、きっと社長は少なからず私に期待を寄せていたからだと思う。それならスキャンダル自体鵜呑みにしないでほしかったが。
その後も新たなデビューグループの話は持ち上がったが、年齢や実力の違いが云々とかで私を入れることにはならなかった。
どうやら事務所の方針としては今の業界の勢いに乗るよりは、もう1つあとの世代で人気を狙いたいらしい。候補に上がっていたのは、15歳前後の練習生ばかりだった。まあ確かに15歳の中に1人20歳がいるのは、どうなんだろう。ちょっと想像したくないしできない。その5年は、とても大きい。
最近入ってきた練習生を見ると、無性に羨ましくなる。彼女たちはもはや若いを超えて幼いが、肉付きとは無縁のぺらぺらの体とか、余計な手を加えずに美しい肌とか、思わず嫉妬してしまう。こういう人達が、生まれながらのアイドルなのだろうか。私だってスカウトされた当初は、彼女たちと同じような混じり気のない美しさを持っていたはずだ。今はもう、努力をしないとそれを維持できない。なにより、未来があることが羨ましい。
もうそろそろやめ時なのだろうか。お金と時間と将来をひたすらに食いつぶし、この生活を続けている。歌もダンスも、一体誰のために練習しているのか分からなくなってきた。ステージに立つことは絶望的なのに。
またひとつため息を吐いて、スマホを伏せようとしたところで通知音が響く。社長からだった。
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作成日時：2023年2月7日 9時
