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10話 ページ10

眩しい陽射しにも劣らず、その金糸のような髪の毛が輝いて見える。
びろうどの色をした背広が彼の体型の良さをより一層と際立たせていた。

彼との会話で分かったことは、英国からの訪問者であること、今日は部下の付き添いでこの学校に来校したということ、そして名前はアーサー・カークランドさんということであった。

もともと来校の予定はなかったが、この学校に通う学生の多くは名家の出自であるが故に部下の方から同行を求められたそうだ。
そして特別な仕事も無いため、暇つぶしに校舎内を散歩していたということである。

「この部屋の前には作品がたくさんあるが、学生が作っているのか?」

「はい。すべてここの学生たちの作品です。」

今回の展示品は布であるが、その布に施される刺繍がそれぞれの個性をもって鮮やかにこの場所を彩っていた。
素晴らしいな、とアーサーさんが呟いた後に見入っている作品が自分のものだと気付いたのはしばらく経ってからであった。

「お気に召していただけましたか?」

「ああ。特にこの鳥の番をあしらった刺繍は素晴らしいな。これは日本の鳥なのか?」

「この鳥はツルと言って、我が国では昔から縁起のいい鳥として親しまれているんです。」

朱色の布に、二羽のツルが羽ばたくような構図と松の木をあしらった。
縁取りは金色の糸を使用して、絢爛さを演出させた。
外国の方からまさか評価をいただけるとは夢にも思っていなかったAは、自分の手先が器用であることを久しぶりに誇らしく思った。

「実はこの布は私の作品なんです。」

アーサーさんは驚いたように本当か、と言い、嬉しそうな顔で私の方へ向き直った。
そうして今度は少し照れるような表情をして見せて、まるで子どものようにころころと変わるその表情につい笑ってしまいそうになる。

「実は俺、趣味で刺繍をやっているのだけど、久しぶりに素晴らしい作品を見たよ。」

ありがとうございます、と御礼を言うとアーサーさんは何かを言いづらそうにこちらの様子をうかがっていて、それに私もどのように反応したら良いのか分からず首を傾げてみせる。
お願いがあるんだが、とアーサーさんは口を開いた。

「俺の刺繍を見てくれないか?部下には馬鹿にされるから見せられないし、嫌でなければ、どうだ?」

想像もつかなかった言葉に驚いたが、善意や下心ではなく、単に外国文化の刺繍がどのようなものか興味があった私は即座に返事をしていた。

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設定タグ:APH , ヘタリア , 本田菊   
作品ジャンル:アニメ
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りつ - とっても素敵な作品で沼りました!続き待ってます! (2022年11月20日 18時) (レス) id: 2356714097 (このIDを非表示/違反報告)
珠緒(プロフ) - ゆずきさん» 応援ありがとうございます!お褒めいただきとっても嬉しいです😭 (2022年2月22日 7時) (レス) id: 530dc5b1e4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずき - 表現とか、語り口や人物の喋り方が違和感なく美しくて凄いですね、、!応援してます😊 (2022年2月21日 20時) (レス) @page3 id: 7fcb5497e4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:珠緒 | 作成日時:2022年2月17日 19時

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