深緑の華麗なる英国紳士 ページ8
月日は流れ、季節は夏へ移り変わろうとしていた。
あの日以来、たまに公園に寄ったりもしてみたが、本田さんに再びお会いすることはなかった。
私の家族や友人にも“本田”という名前を訊ねたけれど、それらしき人物を知っている人は誰もおらず、幻想であったかのようなあの日の出来事は、月日とともに私の記憶からも徐々に薄れつつあった。
なんの変哲もない日々を過ごす私であるが、最近、学校ではある一つの話題で持ちきりになっていた。
それが“英国との短期交換留学”という内容で、留学期間は半年程度であるが、とりわけ子女のために特化した条件となっている。
女性の自立が認められつつある今の時世で、この留学に参加した者には皆、ある程度社会的地位のある仕事に就くことも英国側の推薦により可能だということであった。
それだけではない。
皆が取り立てて騒ぐのはもう一つ理由があって、“英国紳士”そのものに対する興味だった。
我々とは正反対のような艶やかな容姿を持つ、その紳士たちに興奮の声は冷めやらない。
そして今日、ついにこの女学校にも英国紳士が留学の説明会のために来訪すると、教室内は一段と色めきだっていた。
「Aさんも説明会、ご参加されるでしょう?こんな機会二度とないわ。」
「行ってみようかしら。皆が言う英国紳士とやらも気になるもの。」
色めきだつのは、椿津子さんも私も一緒だったか、とAは心の内で笑う。
実際の留学は両親から反対されるであろうが、説明会だけなら問題ないでしょうと説明会のチラシをそっと鞄に仕舞い込んだ。
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りつ - とっても素敵な作品で沼りました!続き待ってます! (2022年11月20日 18時) (レス) id: 2356714097 (このIDを非表示/違反報告)
珠緒(プロフ) - ゆずきさん» 応援ありがとうございます!お褒めいただきとっても嬉しいです😭 (2022年2月22日 7時) (レス) id: 530dc5b1e4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずき - 表現とか、語り口や人物の喋り方が違和感なく美しくて凄いですね、、!応援してます😊 (2022年2月21日 20時) (レス) @page3 id: 7fcb5497e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:珠緒 | 作成日時:2022年2月17日 19時