２話 ページ2
かくいう私は女学校に通い、毎日勉学や裁縫に勤しんでいた。
学友は皆優しく、幸い、私は手先の器用な方であるようで課題は難なくこなせていた。
「Aさんの布、本当に素敵ね。売りに出せるわ。」
その人が近づくと椿の香りがふわりと香った。
長いまつ毛とその奥に見える虎眼石のような瞳をぱちくりとさせている。
名前は椿津子(りつこ)といって、この人もまた
名門家の令嬢であったが、自立心の強い、
今は流行りのハイカラな人であった。
「椿津子さん、次はもう貴女の課題は手伝いませんよ。ふふ」
「素直に褒めただけなのに、Aさんたら酷いわ！
でももういいの。裁縫するぐらいなら立たされた方が
マシよ。女が裁縫をする時代はもう古いんだから。」
きっぱりとそういう彼女であったが、彼女は裁縫が
苦手なだけであって座学の成績は常に最優秀であった。
語学にも長けていて、女学校の生徒たちは皆、彼女に羨望の眼差しを向けている。
「ありがとう。それよりも、もう帰りの支度をされて急いでいるようだけれど、どうかされたの？」
「貴女も行くのよ。今日は明治座で蝶々夫人の千秋楽があるの。券も2枚用意してもらったから。」
「椿津子さんのお好きな俳優が出ている公演ね。」
「そうよ！あと1時間で始まっちゃうんだから早く早く！」
椿津子さんに急かされながら、学校を後にした私たちは馬車に乗り込んだ。
桜並木が薄桃色の絨毯を作っていた。春も半ばであった。
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りつ - とっても素敵な作品で沼りました！続き待ってます！ (2022年11月20日 18時) (
レス) id: 2356714097 (このIDを非表示/違反報告)
珠緒(プロフ) - ゆずきさん» 応援ありがとうございます！お褒めいただきとっても嬉しいです😭 (2022年2月22日 7時) (レス) id: 530dc5b1e4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずき - 表現とか、語り口や人物の喋り方が違和感なく美しくて凄いですね、、！応援してます😊 (2022年2月21日 20時) (レス) @page3 id: 7fcb5497e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：珠緒 | 作成日時：2022年2月17日 19時
