天使の取り分 ページ35
涼介side
雄「…その前に俺も、ワインでも飲もうかな。」
コルクだけでなく、ずっと秘めていたものがスポッと音を立てて開けられた。
雄「…俺さ、まだ小学校の頃に両親亡くして、その後あの施設にきた。」
「…あの事件のこと…?」
雄也が施設に来る前、とある大きな事件が起きた。
雄「あぁ。…もうずっと忘れたと思ってたのに、ふとしたときに思い出して。眠れなくて。眠ったときには必ずあの夢で。」
「…うん。」
雄「だけど、最近。ポルターガイスト現象の夢をみた。」
「…霊の姿は見えないけど物が動いたりとか音がしたりとかの?」
雄「あぁ。」
「…それがどうしたの?」
雄「そういう夢ってのは、激しく傷ついた辛い過去の出来事を受け入れようとする心の働きらしいんだ。」
「…受け入れる、、、。」
雄「勿論。簡単なことではないし、本当に受け入れられるのかも定かじゃないけど、、、。」
「…うん。」
雄「…あのときからの後悔が消えない。」
「…うん。」
雄「どうしてあの時間にドアを開けてしまったのだろうとか、考えれば考えるほど辛くて。」
「…でも、あれは、、、雄也のせいじゃないでしょ?」
雄「…皆そう言ってくれた。だから、、」
グッと息を呑むような、
心を何かが締め付けているような感覚が、俺だけに残った。
雄「前に進もうと思うんだ。
…いや。進まなきゃいけないんだ。
涼介も。」
口元が意思に反して震えている。
再び頭の上に乗る優しい手。
雄「…天使の取り分って知ってる?」
「…なにそれ?」
雄「ワインとかブランデーとか、
製造工程で熟成を要する酒類において、熟成中に水分、アルコールが蒸発する。
それによって最終的な製造量が目減りするでしょ?」
「…うん。」
雄「だけど、それは天使が持っていってしまった分だから仕方ないねって。
だから、
いい部分は少し天使に分けてあげたって考えたらいいんじゃない?」
「…ゆーやって、なんか」
雄「ん?」
「…かっこいいね。」
雄「えっ?あははッ。ありがとう。」
後に聞いた話だと、悪魔の取り分もあるらしい。
悪魔の取り分は、熟成後に樽に染み込んでしまったお酒のことだ。
だけど一点、違うことがあるらしい。
天使の取り分は誰も味わえないが、悪魔の取り分は抽出すると味わえると。
俺たちの経験は、おすすめはしない。
きっと悪魔の取り分だろう。
288人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「Hey!Say!JUMP」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さき(プロフ) - JUMPLOVEさん» 嬉しすぎます!!毎日見に来てくださるなんて、飛んで喜びます!←ありがとうございます!頑張ります! (2020年4月19日 0時) (レス) id: 7b1fe2d542 (このIDを非表示/違反報告)
JUMPLOVE - すっごい好きです!毎日見に来てます!!応援してますので、更新頑張ってください!! (2020年4月18日 23時) (レス) id: e3c5443f13 (このIDを非表示/違反報告)
さき(プロフ) - ゆーさん» 大好きですと、、、すごく嬉しいです!毎日の楽しみだなんて、なんてもったいないお言葉、、!ありがとうございます!頑張ります! (2020年4月3日 2時) (レス) id: 7b1fe2d542 (このIDを非表示/違反報告)
ゆー(プロフ) - このお話大好きです!毎日の楽しみになってます!さきさんのペースで頑張ってください! (2020年4月3日 1時) (レス) id: a344f95c5d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:さき | 作成日時:2020年3月24日 14時