違恋 (ページ12)

今日:16 hit、昨日:82 hit、合計:115,351 hit

儚い君に時よ消さないでくれページ12

・

ひとしきり泣いたAは疲れたのか、

俺の腕の中でくたっと眠りについた。

抱き上げて俺のベッドに寝かせて俺はシャワーを浴びに行こうと来た道を戻ろうとしたけど俺の服の裾を掴んだ手に、

離れることはできなかった。

Aを奥に寝かし直して、並んで横になった俺は特にすることも無く、Aの寝顔を見つめながら頭を撫でた。

さっきまでは気づかなかったけど俺のポケットでなり続ける携帯を手にすると、画面には、

『おい、どこいってんの？』

『Aは？』

『もう終電なくなんぞ』

『心配だから気づいたら連絡だけして、怒んないから』

って湧くんのLINEと着信履歴が6回。

その下には

『湧どうにかするからA頼んだよ』

って黒ちゃんからのLINEと

『A大丈夫？』って心配そうなうっちーのLINE。

一応連絡だけ、そう思って湧くんのメッセージに既読をつけると、すぐにまた震え出す携帯。

｢はい｣

『はいじゃねぇだろ、どこいってんの？Aは？』

やっぱり怒ってんじゃん。

｢俺ん家｣

『なんで？』

｢ちょっとAと夜風に当たってたら家帰りたくなってAにわがまま言っただけ、｣

｢はぁ、まじ心配した、それならいいけど、じゃあ明日Aの荷物持ってくからAのこと頼むな、｣

って彼氏みたいな言葉を言い放って切られた電話。

やっぱり湧くんは何を考えているか分からない。

今にも消えてしまいそうな儚い君に、消えないでと強く願いながら俺も目を閉じた。

・