共に負ったいつかの古傷#5【S×J】 (ページ3)

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Sside

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気まずいといった感情があったわけではなかった。

あの一連の出来事は起こるべくして起こった運命なんだと、少なくとも俺は思っていた。

松本がうちの家に来るのをやめるわけでもなかったし。

ただ、あの日、俺が最後に見た松本の顔は、、

忘れられなかった。

俺の名を必死に呼んで、痛みを我慢するようにぎゅうと閉じられた目、シーツを掴む手。

それら全てが鮮明に映って。

それが正しい事だったとか、間違えたとか、考える余裕なんてあるわけなくて。

ひとつだけ分かったことは、
松本の事が好きかもしれないという気持ち。

顔を合わせる時、笑い合う時、本を読む仕草、好きな音楽を聴きながら目を閉じてリズムに乗っている仕草……。

一つ一つに胸が高鳴る。

男が男を好きなんて……。

当時の俺は、それがいけない事だと思ってた。

それに松本も困惑するだけ、、だから。

伝えるとしても、受験が終わって全てが片付いた後だって。

そう思っていた。

J「明日からセンター試験だな、緊張してきた……」

S「大丈夫だよいつもの通り落ち着いてやれば」

J「うん。……ねえ、櫻井」

センター試験の前の日の夜。

松本がやけに心配そうに部屋の中を歩き回っていた。

よほど緊張しているんだろうと思ってそっとしてたが。

彼とは反対に俺はコタツの中でゴロゴロと明日の科目の一問一答本を読んでいた。

緊張しても空回るだけだよと彼を宥める。

すると松本が少し落ち着きを取り戻し。

俺の横に座る。

トン、と背中に彼の手が置かれた。

少しだけ震えているその手。