159.＿＿ ページ11
Sside
「潤なら帰ってきていませんけど。
貴方は潤の何ですか」
S「えっ……、、」
言葉に詰まった。
まさか家に帰ってるだろう、その読みが外れたのだから。
なに……じゃあつまり本当に松本はいなくなったって……こと、か…？
驚きすぎて、松本の母親に尋ねられた質問に答えることすら阻まれた。
というか、息がつまって声が出なかった。
俺はアイツの……なんなんだろう。
友達？
……変えてくれた人、恩人？
同士？
なんか、どれも当てはまらない様な…。
「最近どこ歩き回ってるのか。ほんっとあの子は…」
松本の親を、俺が否定する権利は無いと思う。
だけど…アイツがここに帰りたいかと言われてみれば、答えはNOだ。
なんでそんな事に気付かなかったんだ
……俺は、、アイツが親に対してどんな思いを抱いてたか、いつもそばにいて共有してたはずなのに。
本当に俺は……情けないよ。
S「すいません……、、帰るわけ、無いですよね……」
立場的にはまだ高校生、弱い俺だけど。
これがせめてもの抵抗で、松本にしてやれるせめてもの救いになってくれたら。
そんな気持ちで言い放ってその場を離れた。
.
なんでいなくなったんだよ…。
こんな突然、受け入れらんねえよ。
もしかしたら俺の家にいるかもしれない、そんな淡い期待を抱いて帰宅したが、ガランとしていた。
母親が音楽を聴きながら掃除しているだけで、家のどこを探しても、他には誰も。
もう一度電話しても繋がらないし、どうなってるんだよ…。
訳がわからず気持ちすら整理出来ないままその日が終わっていった。
ただ、この時、俺は自分の思いを無理矢理に仕舞い込んだんだ。
俺がアイツに対して感情を持ってしまったから。
だから……こんな事に……。
自分のせいで松本を傷つけていたかもしれない事実を認めたくて。
まだそうやって自尊心を保とうとしている自分が嫌いだった。
それでもこの時の俺は、そうするしか出来なかった。
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作者名：syuka | 作成日時：2019年3月4日 19時
