【短編集】Sweetie シルク モトキ マサイ

(12)「かまってよ」(マサイ) ページ28

.


台所にいるAの元に
青いコップを持ったまま
近づいた。

.

台所にはカレーのルウがあって
材料を見ると今日は野菜カレーらしい。

.


その横には俺の好きな
とろけるチーズ

.

.


マ「あのさ」

.

俺が来てもAは
何も言わずに人参を切ってる。

.

マ「A」

.


呼んでも全く応答なし。

.
顔を少し覗き込むと
うっすら涙を浮かべているようなA

俺がさらに覗き込むに連れて
どんどん真下を向く

.

.

マ「泣いてる」

.

.



そっと頰に触れてAを見つめると
Aは人参をまだ
切り終わってないのに

玉ねぎを持って
それを慌てて切り出す。

.
.

マ「なんで泣いてんの？」

.

それもまた無視

.

ちょっとA、
といいかけた瞬間
超早口で


.
.

「玉ねぎ切ってるから」


.

.


いじけた顔してるのが
下を向いてるけど分かった。

あー、わかった。



.


マ「ごめんな」

.


今日一日ずっとパソコンの前にいたから

寂しかったのね。

.
.



いつもより甘い、いつもと違う
コーヒーを置いて

.


「なにを」

.


ぷーっと膨れた頰の空気を
片手で抜くように俺は頰に触れた

.

マ「構って欲しかった？」

.
.

Aの背丈に合わせて
少しかがむ。

.

「そういう言い方されると…」

.


.



俺はAの淹れてくれた
コーヒーを指差しながら


.

.


マ「もう仕事終わったから」

.

.


ぎゅっと背後からAを抱きしめる。

.


ふわっと髪から甘い香りが
漂った。

.

.

.



マ「今日は甘いことする？」

俺はコーヒーを飲みながら
Aに言う

.

いつもよりずっと甘い、
コーヒーを飲みながら。

.
.

するとAは

ばか、って恥ずかしそうに
俺を叩いてから

.

「…一緒にカレー作ってから」

マ「よろこんで(笑)」
.

.



そう言って俺らは仲直り。
.




今日初めて笑ったAの顔は、
いつも以上に可愛く見えて


益々Aのことが愛おしく思える

.

こういうので
かまってよ、って言ってくるなんて
いろいろずるすぎませんか？

.


.
【FIN】

(13)幼馴染×シルクロード→←(12)「かまってよ」(マサイ)

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す