4��忘却記憶 ページ34
『黄瀬獅苑』
自分の名前が耳に入ったからか勢い良く振り返る目の前の彼。考えても分からないなら本人に聞けばいい、丁度校内に残っていたようで助かった。
『……って何やってんの』
「え、あっ……べ、べつに！？か、壁塗り直そうとしとっただけやし！？何、俺がら、らくがきでもするとおも、思ったんかばーか！！」
彼の体に隠れて見えにくくはあるものの黄色いペンキが入ったバケツと筆が私の目に映っている。壁、白なんだけどなぁ。言葉の代わりにため息で返す私が気に障ったのか顔を赤く染めこちらへと詰め寄って来る。
「お、お前なぁ！！いきなり俺の名前呼んだかと思ったら特に要件を言うわけでもなく何がしたいねんっ！！何の用やはよ言え……ってお前」
『何、そんな餌を求める鯉みたいに口開けて。お腹でも空いたの？』
ひとしきり喋ったかと思えば急に一歩後退り口をぱくぱくと開け閉めしている。さっきから一人騒がしいな、と思いはするものの口に出すほどではないため黙って彼の次の行動を待っていると視線がぶつかる。目には戸惑いや不安、動揺といった感情が見えるが数秒後、突然此方に指を向けられた。
「そういえばこないだも俺の名前呼んどったよな！？な、何でや！！俺のこと覚えてる生徒なんて、アイツを除いて居らんはずやのに……」
『名前呼ぶって、去年同じクラスだったでしょ。流石に隣の席の生徒は忘れないよ…あまり来てなかったけど』
まあ休み時間の度に彼の席に座っていたぴくとは名前さえ覚えてないみたいだけど。確かに二人が関わっているところなんて私が知る限り零に等しいのはそうなんだけど色々と引っ搔かる。だがその引っ掛かりの部分も黄瀬くんが魔法を使うのであれば解決だ。
当の本人は私を気にするのをやめたのか筆を手に取りペンキに浸らせている。今のところ何の確証もないが何となく、彼は力を悪用するタイプではない…気がする。こうなったら鎌を掛けてみるか。
『黄瀬くんはさ』
「あ？」
『人の記憶、自由に操作できるの？私の友達も知人も誰も君のことを知らない。いいなぁ、悪さし放題じゃん』
持っていた筆が手から滑り落ち、地に黄色い池が作られる。まあ確かにコイツ何言ってんだと思うよね普通は。だが彼はそうじゃないみたいだ。
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すぴのさうるす(プロフ) - まるさん» お褒めのお言葉有難う御座います！お楽しみ頂けますと幸いです。 (6月28日 22時) (
レス) id: d6eb525f65 (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - 死亡エンドと同じ作者様でしたか。向こうではまだリメイク後の1話のみだった為あまり正確な魅力には気付けませんでしたが、夢中魔法(と略させていただきます)とても好きです。続編楽しんで来ますね (6月28日 2時) (レス) id: 33402943a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：すぴのさうるす | 作者ホームページ：http://around-the-clock
作成日時：2022年10月21日 23時
