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二百三十七話「金色と白雪」 ページ4

確かにこの人は以前云っていた。
鏡花を連れ戻す、と。






「息災じゃったか?」





怯える兎に紅葉は近づく。
Aは鏡花を守るように立ち塞がったが、紅葉は方向を変え敦に向かって行った。







「わっちがどれほどそなたを案じ心を痛めたか。
このような獣畜生共の下にそなたらを残すことになって」


「ッ……お兄ちゃん!」







紅葉は敦の傷を抉るように踏みつける。
何故電話の番号を知っていたのかと鏡花は訊ねた。
敦の云う業者を刺して吐かせたまでだと紅葉は答えた。
これがマフィアの手口だ、Aは漸く理解した。








「もう何も思い煩う事は無い、わっちが守ってやろうぞ」







紅葉の言葉に敦が吠えた。






「彼女はもうマフィアには戻らない!
彼女の力は探偵社の仕事で振るわれるものだ!」





紅葉がピクリと動きを止めた。
すると、頬に涙がつうっと伝った。
鏡花は驚き、混乱する。
紅葉はこつこつと靴を鳴らしながら鏡花に近付き、
立ち塞がるAもろとも優しく抱き締めたのだった。








「可哀想な鏡花や。甘言に唆され、そこが光の世界と勘違いしたのであろう」







それは優しい手ではなかった。
血と毒に濁り、優しさの皮を被った大人の手であった。
抱き締められているのに、身の毛がよだつほどの恐怖に襲われる。
紅葉は声を低くさせてこういった。








「じゃが奴等はいずれまた云うぞ、夜叉白雪を使えと。
それは厭であろ?」


「なら使わせなきゃいい、探偵社は社員の意思を尊重してくれる職場だ」


「!」








声を発したのはAであった。
Aは紅葉を突き放し、銃を構えた。
その殺気は紅葉すら身震いするものであった。









「お主も光の世界に惑わされておる。
自分と向き合うべきじゃ、己が何者か。
死神の力を探偵社で使えと云われる日も、いずれ来るであろう?」


「!」








己が何者か、過去にどんな過ちをしたか。
洪水のように溢れてきた過去の記憶がAの足を掴み離さない。









「じゃが案ずるでない。
異能目当ての屑共など、わっちが微塵に切り裂いてくれる」


「マフィアがそれを云うか…………!」









敦が怒りに震え、紅葉に向かって飛び付く。
刹那、空中に浮かぶ敦を光の早さで何者かが切りつけた。
紅葉の後ろに影が現れる。
Aはそれを見て硬直した。







「夜叉がもう一体……!」





紅く金色に光る夜叉は、紅葉の物であった。

イラスト紹介→←二百三十六話「少女の才能、似合わぬ職業」



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+アリス+(プロフ) - りんさん» コメントありがとうございます。自分のペースでこれからも頑張っていこうと思います。 (2019年5月3日 16時) (レス) id: 00e250021f (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - ゆっくりで書いてください (2019年5月3日 15時) (レス) id: 5016550d2e (このIDを非表示/違反報告)
+アリス+(プロフ) - 夏季さん» はい、番外編にて書かせていただきます (2019年1月2日 10時) (レス) id: 87d894de71 (このIDを非表示/違反報告)
夏季 - 敦が絶対女王である設定と裏社会の人間だった設定の話宜しくお願いします。楽しみにお待ちしてます (2018年12月30日 18時) (レス) id: a5c09ccca7 (このIDを非表示/違反報告)
+アリス+(プロフ) - 夏季さん» はい、リクエスト、確かに承りました。 (2018年12月30日 18時) (レス) id: 87d894de71 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:+アリス+ | 作成日時:2018年12月24日 15時

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