九十七話「過去の恐怖」 ページ10
暗い闇。
Aを包み込む大きな闇が目の前に広がっている。
多分……いや、これは夢なのだろう。
上も下も見渡す限り闇。
一辺の光もないところにAは立っていた。
「ここは…」
Aは辺りを見回し、先程の出来事を思い出した。
敦が芥川に捕らわれ、自分は羅生門に腹を貫かれた。
そして鏡花も連れていかれた。
ああ、本当に__
ー本当に情けないなー
「!」
バッと反射的に後ろを振り返った。
そこにいたのは__
「院長……先生……」
一辺の光もない闇のなかに現れたのは孤児院の院長だった。
そして彼の存在を見たことで更に実感がわいた。
自分は夢を見ているのだ、と。
そして次の瞬間、自分のいた場所が昔の孤児院に変わった。
こんな夢、悪夢だ。
ー助けるなどと大口を叩いた結果がこのザマではなー
「…ッ」
徐々に蘇る昔の恐怖。
今でも昨日のことのように思い出せる。
お仕置きという名の暴力、虐待。
感情をいくら押し殺しても絶えず流れた涙。
__でも今は違う。
「違う、私はまだ諦めない」
ーお前はいつから私に口答え出来るほど偉くなったのだ?ー
口答えすればお仕置きをされ、最悪の場合食事抜き。
院で当たり前だった光景が頭をよぎる。
これは悪夢にしても酷すぎる。
まるで地獄を見ているようだ。
「守りたいものが増えた。もう二度と手放したくない」
キッと院長を睨み付ける。
そこには闘志の炎が燃えていた。
ー笑わせるな。おまえは敦も鏡花と云う少女も救えなかっただろうー
「…ッ」
ー諦めろ。『あの力』を操れない時点でお前は負け犬でしかないのだー
久しぶりに味わう言葉の暴力。
昔からずっと聞かされてきた。
でももう負けない。
「……そうだとしても!」
声を張り上げる。
彼をまっすぐ見つめ、自分を取り囲む闇を吹き飛ばすような大声でAは云った。
その目は敦のように虎の金色が写し出されていた。
虎は強い。
だからこそ、こんなことで諦めてはいけないのだ。
「力を操れなくても、負け犬だとしても
__私は諦めたくない!」
Aは彼を食らうように見つめる。
まるで虎が憑依したようだった。
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+アリス+(プロフ) - かにかまさん» 塩対応能力(笑)ですね。妹ちゃんは太宰さんを塩対応すればするほど良いと(個人的に)思ってるので(寧ろ敦くんには天使スマイル向けてほしいです) (2018年10月24日 19時) (レス) id: 87d894de71 (このIDを非表示/違反報告)
かにかま(プロフ) - 塩対応能力w (2018年10月23日 20時) (レス) id: 723d39c3a6 (このIDを非表示/違反報告)
+アリス+(プロフ) - 紅華さん» すみません間違えていました。誤字の指摘、本当にありがとうございます。申し訳ありませんでした (2018年9月30日 23時) (レス) id: 87d894de71 (このIDを非表示/違反報告)
紅華(プロフ) - あの公開ではなくて後悔ではないのですか? (2018年9月30日 23時) (レス) id: 1bdfb279a8 (このIDを非表示/違反報告)
+アリス+(プロフ) - 緑谷みとかさん» はい、では早速紹介させていただきます! (2018年8月14日 10時) (レス) id: 87d894de71 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:+アリス+ | 作成日時:2018年7月18日 20時