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百十七話「闇に生きる闇の花」 ページ31

「A…遅いなあ」





社員寮で敦はしんと静まり返った部屋にいた。
何処か浮かない顔をして携帯を見つめる。
もう深夜になっているのにAから連絡がない。





「何があったんだろう」





お兄ちゃんと笑顔で呼んでくれる妹は今日此処にはいない。
あの子は賢い。
だから連絡なしに何処かへ行ったりはしない。
何でだろう。
すごく胸騒ぎがするんだ。





ーーーーーーーー

ーーーーー

ーー






「此処は……!」




見たこともない医務室で目が覚める。
でも探偵社の医務室ではない。
薬や包帯の病院っぽい匂いがする。






「起きたかのう」


「うわぁッ!?」





キャアッみたいな女の子らしい悲鳴など出るわけなく、兄と似たようなビックリ顔をする。
Aに話しかけたのは、先程睡眠薬を押し付けた赤髪の女性だった。







「まあ、そう驚かんでも」


「誰」


「わっちは尾崎紅葉。
マフィアの五台幹部の一人じゃ」


「マフィア!?」






目を白黒させる様子に紅葉は「愛いのう」と微笑む。
そして紅葉はゆっくりと説明した。






「お主を誘拐したのにも理由がある。
マフィアへの勧誘の為じゃ。
いずれ鏡花も戻ってくる」







マフィアは正気なのか?
いや、マフィアだから正気なのか。
何故そんなことを云い出すのか。
一番気になったのは…







「鏡花ちゃんを…?」


「そうじゃ。
マフィアでこそお主らは咲くことのできる
闇の花であるとわっちは思っておる」







自分が四年前にあの事件を起こしたから?
たったそれだけで?
心当たりはそれだけなのに、マフィアへ入るべきと云われるのが判らなかった。






「まあ、すぐに決めろとは云わぬ。
じっくり考えるとよい」







ああそうじゃ、と思い出したように紅葉は云う。







「お主の持っていた買い物袋はそこに置いてあるからな」






飼っている仔猫を置いて出掛けるように、Aを見つめる。
良い子で待っていてね、と云わんばかりの優しい目は何処か黒く濁っていた。

百十八話「病室への来客」→←百十六話「神隠しとは」



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+アリス+(プロフ) - かにかまさん» 塩対応能力(笑)ですね。妹ちゃんは太宰さんを塩対応すればするほど良いと(個人的に)思ってるので(寧ろ敦くんには天使スマイル向けてほしいです) (2018年10月24日 19時) (レス) id: 87d894de71 (このIDを非表示/違反報告)
かにかま(プロフ) - 塩対応能力w (2018年10月23日 20時) (レス) id: 723d39c3a6 (このIDを非表示/違反報告)
+アリス+(プロフ) - 紅華さん» すみません間違えていました。誤字の指摘、本当にありがとうございます。申し訳ありませんでした (2018年9月30日 23時) (レス) id: 87d894de71 (このIDを非表示/違反報告)
紅華(プロフ) - あの公開ではなくて後悔ではないのですか? (2018年9月30日 23時) (レス) id: 1bdfb279a8 (このIDを非表示/違反報告)
+アリス+(プロフ) - 緑谷みとかさん» はい、では早速紹介させていただきます! (2018年8月14日 10時) (レス) id: 87d894de71 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:+アリス+ | 作成日時:2018年7月18日 20時

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