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七十五話「それぞれの夜」 ページ29

その日の夜の出来事である。
Aと敦は夕飯を済ませ、テーブルに向き合っていた。





「……で、話って何?」




敦が話を進める。
ことの発端は今日の帰り道。
社員寮に帰ろうとしていたところ、Aが突然「話したいことがある」と云い出したのだ。





「……」





怖かった。
今話そうとしていることを伝えたら、この関係が崩れてしまいそうで。
でも話さなきゃいけない。
昨日からずっと考え続けてきたことを伝えるために、拳を握りしめる。






「私……お兄ちゃんに隠していることがあった。
四年前のあの日のこと、どうして私が死神なんて呼ばれたのか」






声が震える。
手が震える。
呼吸が苦しくなる。
それだけ怖かった。






「(本当は話さなきゃいけない。判っているのに……)」






しばらくの沈黙が流れる。
こういうときはどうすればいい?
頭は真っ白。
何も考えられない。






「……ッ」








でも決めたのだ。
私はこうしたい。そう決めたのだ。
息を吸い込み、五月蝿い脈を落ち着かせる。







「ッ……でも今は話したくない!」

「……えッ?」







出した結論はかなり拍子抜けするものだった。
まるで昭和の漫画のようにズコッとこけてしまいそうだ。








「だって怖いもん!お兄ちゃんに嫌われるの!」







そしてその理由もかなり子供っぽかった。
今までしっかり者の雰囲気を漂わせていたAが珍しく見せた、子供っぽい瞬間だった。







「僕は嫌わないよ。例えAがどんな酷いことをしたとしても。
だって家族じゃん」

「……お兄ちゃん」

「だから待つよ。その代わり、いつか絶対話してね」

「うん!約束する」







優しい兄として、敦はAの頭を撫でる。
Aの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
安堵の涙である。






「(早く見つけよう。私の存在を隠した人を。
なんで私が捕まらなかったのか、その理由を)」






涙の裏で、1つの固い決心をする。
『四年前のあの日』の全てを知るまであと__。






ーーーーーーーーーーー

ーーーーーーー

ーーー








「見つけた」






また、時を同じくして太宰は窮地に立っていた。
太宰の外套を掴むのは、赤色の着物を纏った少女。
その後ろには、お化けとも云い難い、恐ろしい何か。
童話の白雪姫のように白く、架空の存在、夜叉のように恐ろしい。







「これはまずい」







物語はまた複雑に絡みだす。

一寸息抜き→←七十四話「暗い感情、大切な人」



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作品ジャンル:アニメ
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+アリス+(プロフ) - 霧瑠乃さん» ありがとうございます!では早速紹介させていただきます。 (2018年6月24日 20時) (レス) id: 87d894de71 (このIDを非表示/違反報告)
霧瑠乃(プロフ) - +アリス+さん» はい!オッケーですよ! (2018年6月24日 18時) (レス) id: 243261d0e7 (このIDを非表示/違反報告)
+アリス+(プロフ) - 霧瑠乃さん» 返信が遅くなってしまい申し訳ありません。イメ画、拝見させていただきました。汚くないです。むしろ自分の夢主をこんなに可愛く描いてもらえてとても嬉しいです!宜しければ、このイラストを小説の中で紹介したいのですがいいですか? (2018年6月24日 17時) (レス) id: 87d894de71 (このIDを非表示/違反報告)
霧瑠乃(プロフ) - +アリス+さん» イメ画描いたんで…汚くて申し訳ない (2018年6月14日 18時) (レス) id: 243261d0e7 (このIDを非表示/違反報告)
霧瑠乃(プロフ) - +アリス+さん» http://uranai.nosv.org/img/user/data/3/6/7/367184e309c78bafdccbd390e66ab0c5.jpeg (2018年6月14日 17時) (レス) id: 243261d0e7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:+アリス+ | 作成日時:2018年5月21日 17時

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