小さき白虎、この世界を駆ける２【文スト】

七十一話「大切な人」 ページ25

乱歩が淡々と推理する。
だが自分の部下が犯人だとは認めたくない箕浦が反論をする。
だが乱歩も負けていない、ならば証拠を見せてあげようと云わんばかりにある提案をした。
それは彼の拳銃を調べれば犯人かどうかがわかる、と云うものだった。





一方でAもまた推理をしていた。
彼が犯人だということはやはりあの推測は間違っていなかった。
そして杉本の手元をもう一度だけ確認する。
そしてもう一度、遺体の手元を確認する。
もしこの予測が中っていたら……彼は最低な人間だ。






そして視線を戻し、また静かになった杉本を確認する。
やっぱり＿＿＿







「彼は考えている最中だよ。
減った三発分の銃弾についてどう言い訳するかをね」







乱歩はニヤリと笑みを浮かべそう云った。
まだ杉本は黙ったままだった。
でも次の瞬間







「マズい」






彼は拳銃に手を伸ばした。
ああ、やっぱりそうなんだ。
彼が犯人だ。
でも……







「でも………なんで……」







Aがポツリと何かを呟く。
その目に光はなく、暗い何かを見つめているようだった。
そして犯人が拳銃を構えようとした瞬間……








「Aちゃん？！」







太宰が止めようとするのも遅かった。
Aは音もたてず、一瞬のうちに犯人の目の前に現れたのだ。
それこそ架空の存在、死神のように。






「えっ」






銃を持ったまま怯んだ犯人の杉本。
だがそれもつかの間、Aが犯人の手を払い、拳銃を飛ばしたのだ。
次の瞬間、十四とは思えないほどの力で彼を背負い投げ、取り押さえたのだ。
そしてそのときの少女の目には光など存在しなかった。








「うがっ……」








その場にいた全員が行きを飲んだ。
たった十四の少女が大人を倒したのだ。







「なんで……」






弱々しい声がポツリと聞こえた。







「…なんで彼女を殺したんですか？」








犯人に何かを訴えるようにAは話す。







「貴方、嘘をつきましたよね。
本当は……山際さんの彼氏さんですよね？」

「………っ」







Aの問いに返事はなかった。
つまりこれは真実なのだろう。
Aの予想した、最低の出来事である。








「ならなんで殺したんですか！
貴方にとって彼女は大切な人じゃなかったんですか！」








大切な人、それはAにとって自分の命と同価値のものだった。
それを殺めた彼はAにとって、理解できない、気持ち悪いものでしかなかった。

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