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三十三話「生まれつきですから」 ページ34

「じゃあ行きますか!」





バッグを肩にさげ、らんらんとした気持ちで足を踏み出す。
初めての仕事。
初めての依頼。
何もかもが新鮮に見えてしまう。
さあ、ドアを開けよう!
そう思ってドアノブに手を伸ばそうとしたそのとき……






「Aちゃん、一寸待っていてください!」


「…?」





伸ばそうとした手をナオミさんにガシッと捕まれる。
なんだろう?
そう思って後ろを見ると……ナオミさんが良く判らない棒のようなものを持ってにっこりと笑っていた。





「な、なんでしょうか?ナオミさん?」


「外に出るのにその髪型ではいけないと思いまして」


「そ、その棒みたいなのは?」


「ヘアアイロンですわ!さあAちゃん、此方に座ってください!」







へああいろん?なんじゃそりゃ。
孤児院では聞かなかった単語だ。
私の大好きなお伽噺や小説にも出てこなかったぞ。
アイロンは服をのシワを伸ばすあれのはず。
そしてヘアは髪だから……まさか!?






「わ、私は服じゃないです!」


「……何を云っていますの?寝癖をなおすだけですよ?」


「へ……?」







寝癖をなおす?
この髪は寝癖ではなく生まれつきの癖っ毛なのだが……
そうこうしているうちに、ナオミさんに腕を引かれ椅子に座らされる。






「!?」






い、一体何が始まるんだ!?
助けを求め、お兄ちゃんの方を向いたが、
肝心のお兄ちゃんは『仲良いなあ』とでも云わんばかりの眼差しで私を見ていた。
トイレから戻ってきたらしい樋口さんも同じような目で見ていた。
いや、何で皆和んでるの!?









「ふふっ、そう緊張しなくても、すぐ終わります」






ーーーーーー

ーーー







「ど、どうしてですの?直しても直しても髪がハネてきますわ……」






かれこれ十五分、ナオミさんに寝癖をなおしてもらっている。
…だが無理だ。
私の癖っ毛はかなり手強い。
ちっちゃい頃にドライヤーとヘアブラシを手に癖っ毛を直そうとしたが一時間かけてもダメだった。
直しても直しても髪がぴょこんとハネてくる。








「もう大丈夫です。
この癖っ毛は生まれつきですし、もうストレートヘアは諦めていますから」


「そんなぁ……うう、悔しいですわ」








ガクッとナオミさんが膝から崩れ落ちた。
なんだか申し訳ない。

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作品ジャンル:アニメ
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+アリス+(プロフ) - 野良神さん» 誤字の指摘ありがとうございます。すぐに直しますね。 (2018年12月24日 10時) (レス) id: 87d894de71 (このIDを非表示/違反報告)
野良神(プロフ) - 13ページの異能力が維能力になってますよ! (2018年12月24日 9時) (レス) id: 98ee09b097 (このIDを非表示/違反報告)
+アリス+(プロフ) - issuさん» 判りました。こちらの不具合かもしれないので直してみます。この作品を見てくださりありがとうございます (2018年10月13日 21時) (レス) id: 87d894de71 (このIDを非表示/違反報告)
issu(プロフ) - はい! (2018年10月12日 22時) (レス) id: 9f68ff9d03 (このIDを非表示/違反報告)
+アリス+(プロフ) - issuさん» イメ画は設定のところにあるもののことでしょうか? (2018年10月12日 20時) (レス) id: 87d894de71 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:+アリス+ x他1人 | 作成日時:2018年4月6日 17時

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